会計が分かるクイズ 「医薬品企業」対決
クイズで学ぶ会計知識(8)

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2020/10/22 2:00
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写真はイメージ=PIXTA

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ハードルが高い、難しいというイメージがある会計。しかし、実際のビジネスを念頭に入れて財務諸表を読むと、驚くほど企業の特徴が会計に反映されているのが分かる。SNS(交流サイト)で話題の「大手町のランダムウォーカー」こと福代和也さんが出題する会計クイズを解いて、ビジネスや投資に役立つ企業への理解を深めていこう。

今回のテーマは、

【医薬品企業の損益計算書】

医療用医薬品は新薬と後発薬(ジェネリック)とに大別される。安価な後発薬を扱う企業の収益構造は、一般の製薬会社と大きく異なる。今回は医薬品企業2社を比較しながら、その違いを見ていこう。


第一三共は新薬が収益の中心。東和薬品は後発薬に特化した製薬企業だ。同じ製薬業界でも、取り扱う薬によってその損益計算書の形は違う。(1)と(2)はそれぞれどちらの損益計算書だろうか?


多くの新薬は長い開発期間と莫大な開発費をかけて販売される。この際に20~25年の期間の特許が設定され、その間新薬メーカーは独占的な製造・販売が行える。薬価も自社で設定できるため、単価は高い。半面、後発薬は開発期間や開発費は新薬に比べてはるかにかからない。特許切れの新薬と同じ成分・効果の上、安価で提供できるのが強みだ。この開発過程の違いが、損益計算書に反映されている。

■Point1 第一三共の収益モデル

新薬開発には莫大な研究開発の期間と費用が必要になる。必然的に第一三共の売上高研究開発費比率は東和薬品より大きくなる。半面、単価も高いため営業利益率自体はそう大差はない。注目すべきは売上高販管費比率の高さだ。第一三共は医療用だけでなく一般用の医薬品も製造・販売している。一般用医薬品ではテレビCMなどに対する広告宣伝費が発生するため、販管費が膨らみやすいわけだ。

■Point2 東和薬品の収益モデル

東和薬品は後発薬メーカーだ。このため、研究開発費は新薬メーカーよりはるかに少ない。ただ、特許切れの新薬に対し新薬メーカーが公開するのは主成分だけのため、それに対する添加剤は自社開発する必要がある。また、単価が小さいため売上高原価率は高くなりがちだ。この多くは材料費や外注加工費、工場などの減価償却費が占めており、新薬メーカーより製造業的な色彩が強いと言える。


(1)が東和薬品、(2)が第一三共

第一三共の売上高原価率は東和薬品より低いが、他の新薬メーカーよりは高い。実は第一三共は後発薬の製造・販売も手掛けているため、その分売上原価が膨らんでいるわけだ。また、大手新薬メーカーは海外企業を買収することが多い。買収先の収益性が悪化すると減損損失が発生するが、第一三共が採用する国際会計基準ではこれが売上原価や研究開発費に計上される点には注意しよう。

●第一三共は一般用も手掛けるためCMなどにかかる広告宣伝費が発生。売上高販管費比率は高くなりやすい

●第一三共は新薬の開発に巨額の費用を投じている。開発後は特許により製造・販売を独占、単価も高い

●東和薬品は後発薬を手掛けるため研究開発費は軽い。半面、薬価自体の単価は小さい

●薄利多売のビジネスモデルのため、東和薬品の売上高原価率は高く出やすい。販管費は新薬メーカーよりは軽い

出題者はこの人
福代和也さん

Funda 代表取締役。中央大学専門職大学院修了、PwCあらた有限責任監査法人を経て2018年から現職。会計およびマーケティングに関するコンサル業務をメインに行う。「大手町のランダムウォーカー」としてSNS上で会計クイズを出題中。

共同作成者:西尾奎亮

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著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/10/21)
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