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中部で中小の生産性改革弾み コロナでクラウド導入2倍

中部の中小企業がクラウドサービスを活用し、新型コロナウイルス禍を乗り切ろうとしている。クラウドサービス大手のセールスフォース・ドットコムも中小企業中心に顧客開拓を進めており、直近の国内の申込数(月平均)はコロナ前と比べ約2倍に達する。業務の効率化だけではなく、新事業の開発につなげる企業もある。

靴に針などが残っていたら瞬時に通知する(ハシマのX線検査装置)

「一刻も早く現場に届けたい。力を貸してくれ」。コロナ感染者が相次いだ4月中旬。大洞印刷(岐阜県本巣市)の大洞正和社長はチャットで社員らに語りかけていた。同社はプラスチック加工や印刷を得意とする。当時医療現場ではフェースシールドが枯渇しており、簡易的なものなら既存設備で作れるのではないかと考えた。

一方、感染リスクをおさえるため、従業員の半分以上が自宅待機していた。会社と在宅中の社員をチャットや営業支援ツール、オンライン会議でつなげ、リアルタイムで設計図の改良を続けた。素材調達の傍らで医療機関などへの周知もすまし、構想からわずか2週間で生産にこぎ着けた。これまで約90万枚を生産したという。

ネット環境さえあればどこでもリアルタイムでデータ共有ができるクラウドの特性を生かし、在宅勤務中でも通常と変わらない生産性を維持した形だ。大洞社長は「クラウド導入を進めていなければここまで早く投入できていなかった」と断言する。セキュリティーが問題になるからだ。

自社システムで対応する場合、通信中の情報漏洩を防ぐ新たな仕組みが必要となる。大量のデータが保管されている端末上の取り扱いも決めなくてはならない。クラウド上の情報管理なら、それらの手間は不要だ。

大洞印刷のフェースシールドは数十秒で組み立て、装着できる

大洞印刷は帳票の印刷が祖業だが、電子化により市場が急速に縮小。クリアファイルや同人誌の印刷受注システムなど事業を増やしてきた。1人の従業員がさまざまな商談に対応できるようにするため、クラウド上で顧客の要望や納期を共有した。2020年7月期の売上高は約14億円と、08年7月期と比べ2倍になった。足元ではカスタマーサポートもリモートワークできるよう、システムの改良を進めている。

新規事業につなげる会社もある。縫製関連機器メーカーのハシマ(岐阜市)は来年をめどに人工知能(AI)とクラウドを組み合わせた品質管理サービスをアパレル向けに提供する。自社が提供するX線検査装置で集めた服や靴の画像データをクラウド上に集め、AIが異物がないか診断する。針などが残っていたら瞬時に通知する。

注文住宅などを手掛けるアップウィッシュ(愛知県岡崎市)はクラウド上の顧客管理システムなどを使い、担当者それぞれで抱えている情報を一元管理。より適切なタイミングで営業をかけられるよう改善を進めた。結果、足元の商談数は月520件と6年前の4倍になった。15年には不動産企業にクラウド導入支援を手掛ける子会社も設立した。

在宅勤務の浸透をきっかけに、中小企業にもクラウド化の波が押し寄せる。とはいえセールスフォースの顧客も現時点では大企業が多数を占める。伊藤靖執行役員は「導入するだけで業績が伸ばせるわけではない」と話し、中小企業向けにデータの活用方法や現場での導入支援を進める方針だ。

(植田寛之)

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