福島・郡山市の工業団地、転出相次ぐ 台風19号1年

2019年台風19号が東北を襲って13日で1年。工業団地や鉄道など経済のインフラにはその爪痕が残る。水害に襲われた福島県郡山市の工業団地では企業が相次ぎ転出している。
阿武隈川と支流の氾濫で2メートル前後冠水した郡山中央工業団地の真ん中には広大な空き地が広がる。大和ハウス工業が大型物流施設の増設を計画していた予定地だ。
大和ハウスは延べ床面積3.8ヘクタールと福島県中通り地区で最大級の物流施設を台風の直前に開設。市街地に近い立地の良さからテナントは満杯になり、増設に着手しようとした矢先に水害に襲われた。同社の施設は敷地のかさ上げによって被害はほとんどなかったが、増設計画は白紙になった。
この一帯には11ヘクタールに及ぶ日本たばこ産業(JT)の工場があったが15年に撤退した。各社の海外シフトも重なり勢いを失いかけた工業団地が、物流関連の集積で活力を取り戻すとの期待は台風でくじかれた。
大和ハウスの北隣の日立製作所は主力事業の県外への移転を決めた。南隣の林精器製造(福島県須賀川市)は事業拡大に備えて購入した工場用の建物を撤去する。
全国的な自然災害の多発で企業はリスク管理に敏感になっている。
化学薬品卸の東鉱商事(茨城県日立市)は中央工業団地にある物流センターを郡山市郊外にある郡山西部第一工業団地に移すことにした。「被災リスクを減らすには高台に移転するしかない」(同社)と考えたためだ。

国土交通省が発表した7月の基準地価は郡山中央工業団地の測定地が1年前に比べ17%安と全国の工業用地で最大の下落率になった。郡山市の企業誘致の担当者は「堤防の改修が進み安全性は格段に高まったのだが、進出希望は少ない」と声を落とす。
一方、中央工業団地に本社を置く総菜メーカーのライフフーズは本社工場の隣に床をかさ上げした新工場を建設中だ。「従業員の通勤のしやすさや配送効率の良さなどの利点は大きい。防災対策を徹底すれば、リスクは管理できると判断した」(同社幹部)
団地内に3年前に開業したショッピングセンターも交通の便の良さから好調が続いている。工業団地の再活性化に向けた模索は当面続くことになりそうだ。