桐谷さんが選ぶ安心優待 廃止リスク低い銘柄の条件は

優待を長く続けている銘柄から選ぶお値打ち株
どうも、桐谷です。株主優待の廃止・縮小が続きますね。私が考える廃止・縮小リスクの低い優待銘柄とは、長期で実施している上で、(1)優待品が自社製品・サービス(2)業績がいい企業(3)地方の企業で地元企業の産品が優待品──のいずれかに該当する銘柄です。
1つ目の「自社製品・サービスの優待」は、低コストで優待品を調達できる上に、自社製品などの宣伝にもなるというメリットがあります。2つ目の「業績がいい企業の優待」は、業績がいいなら優待を廃止する理由がないから。3つ目の「地方企業の地元産品優待」は、地元企業とのお付き合いもあり、そう簡単に優待をやめるわけにはいかないだろうという見方です。
今回は、20年前後の長期にわたり優待を実施し、この3条件のいずれかに合致する銘柄を選びました。コード順に紹介していきます。
20年以上優待を続けるホクトは自社商品のセットが優待品。以前はキノコが届き、料理をしない私は往生しましたが、今はレトルトセットなども選べます。
次はサッポロホールディングス。上場しているビール大手は3社ありますが、20年前から優待を実施しているのはサッポロだけなんです。当初は缶ビールに交換できる券でしたが、今はビールセットや、ビール以外の飲料・食品などから選べます。競合他社も優待を実施していますから、やめにくいと思います。
石井食品も20年前から優待を実施。自社製品セットですが、私は長期保存ができる非常食をもらっています。今は災害に備え自分で非常食を買う人もいるぐらいですから、こういう優待もありがたいですね。
シノブフーズの優待はおいしいと評判ののりです。こちらも20年前から実施。最近は長期保有優遇制度を導入しています。

20年間で優待が進化
西松屋チェーンは業績がよくて注目を浴びていますね。株価が高いので選ぶべきか迷ったのですが、ここも20年前から優待を続けています。20年前は2000円の買い物で使える200円券10枚。それが今は1000円分の買い物カードが年2回と使い勝手がよくなりました。
飲食店は赤字が心配ですが、コロワイドは今年3月、コロナ禍の中で優待を臨時に増額。心意気ですね。こちらも20年前から続く優待で、株主重視の姿勢は変わりません。
タカノも優待を長く実施しています。ここは長野県の会社で、地場企業製品が優待品のパターンです。
芙蓉総合リースは優待実施期間が十数年と、唯一、20年に届かないのですが、今期増益、16期連続増配の見通し。業績が好調な企業です。配当利回りは3%あり、優待はカタログギフトか図書カードから選べます。
ANAホールディングスの優待も長いですね。交通機関は乗客が少なくても飛行機や電車を動かさなくてはならない。それを考えれば優待も廃止されないのではないかと。「Go Toキャンペーン」で客足も戻りつつあるようなので入れました。
サックスバーホールディングスはバッグの会社で、以前に私が使っていた大きなリュックは、こちらの優待でもらったものでした。100株だと優待品は決まってしまいますが、1000株以上なら4種類の品物から1つ選べます。選択の対象になる商品も毎年変わり、私は今年、キャリーバッグをもらいました。
はみ出しコラム「記憶に残る優待廃止」
最も記憶に残るのは、上場廃止になった日本航空(2012年に再上場)です。バブルの頃から株主で、広島に帰省する際に優待を使ったりしていました。日本エアシステムという会社の株も持っていたのですが、ここが日航に吸収されたため、日航株をたくさん持っていたんです。2010年の上場廃止前、株価は下がっていたのですが、私は株価が下がるとナンピンする癖があるようで……。日航株を買い増したんです。そして破綻、上場廃止。リーマン・ショックから立ち直ろうという時期だったので、本当にこたえました。他にも京樽、北の家族でも上場廃止を経験しました。そんなつらい経験をしていますから、優待が改悪されて株価が下がっても、動じないようになりました。
元プロ棋士(七段)。1984年の失恋をきっかけに株式投資を始める。現在900以上の優待銘柄を保有し、その優待品で日々の生活をほぼ賄っている。癒やされる人柄も人気の理由。71歳。
(佐藤由紀子)
[日経マネー2020年12月号の記事を再構成]
関連キーワード