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自主性と創意のハナマウイ、都市対抗野球に新風
編集委員 篠山正幸

2020/10/13 3:00
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初挑戦で都市対抗代表の座を射止めたハナマウイ

初挑戦で都市対抗代表の座を射止めたハナマウイ

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、例年の7月から11月へと大会日程が移された都市対抗野球に、新顔がお目見えする。千葉県富里市を拠点とする「ハナマウイ」。デイサービスの仕事に取り組む選手たちの本戦進出は産業構造の変化を映してきた大会に、新しいページを加えるかもしれない。

ハナマウイは昨年創部したばかりで、今年初めて都市対抗の予選に参戦した。監督は本西厚博さん(58)。プロ野球のオリックス時代、1995、96年のパ・リーグ連覇に貢献した外野手だ。イチロー選手、田口壮・現オリックスコーチとともに固めた外野陣は鉄壁を誇り、96年の日本シリーズでは巨人を下す立役者の一人となった。

当時のオリックス監督は仰木彬さん。「マジック采配」で名をはせた名将の薫陶を受けた本西監督が率いるハナマウイも、ミラクルな進撃ぶりだった。

1次予選となる8月の千葉県予選をギリギリの3位で通過。10月の南関東大会に進んだ。これがいわば最終予選で代表枠は3つ。初戦のホンダ(狭山市)には0-6と敗れたが、日本製鉄かずさマジック(君津市)に5-3で競り勝つ。YBC柏(柏市)には0-1で敗れたものの、一戦ごとにしぶとさを増した。

ともに初出場を目指すハナマウイ(守備側)とYBC柏の対戦となった南関東第3代表決定戦

ともに初出場を目指すハナマウイ(守備側)とYBC柏の対戦となった南関東第3代表決定戦

ホンダ、日本通運(さいたま市)の都市対抗常連が、順当に第1、第2代表の座を射止め、残る1枠をかけて7日、YBC柏との第3代表決定戦に臨んだ。好投手、清岡龍哉から三回に先制すると、五回には2ランで加点。抜群の制球を誇る平野暖周が被安打6で完封。8-0で勝ち、あれよあれよという間の東京ドーム進出となった。

本西監督は自らを含めて、試合前からチームに暗示をかけていたようだ。「今日は勝つ(順番の)試合。負け、勝ち、負けときて、ジャンケンで勝って(験のいい)裏(後攻め)を取ったし。勝つ要素しかなかったね」

もちろん、験担ぎばかりではない。「野球はバッテリー」(本西監督)といい、最初はチームに投手だけを集めたという。千葉大会から合計9試合で、平均約2.3点という失点数が、投手力と堅い守りを示す。

この地区に所属するJFE東日本(千葉市)が昨年の都市対抗で優勝、推薦枠で本戦に出場するために、実質的に1枠増えた。そんな好条件もあったが、東京ドームは運やツキで行ける舞台ではない。

本西監督も社会人野球の経験者だ。三菱重工長崎で都市対抗にも出場した。社会人は「仕事をさせてもらい、野球もやらせてもらえることへの感謝の気持ちを忘れてはいけない」という。

社会人野球の選手は「仕事も野球もやらせてもらえることへの感謝が大事」というハナマウイ・本西監督

社会人野球の選手は「仕事も野球もやらせてもらえることへの感謝が大事」というハナマウイ・本西監督

まず仕事をきちんとやること、というチームの決め事が、自主性と創意を生んだ。デイサービス利用者の送迎などの仕事をこなす選手たちは毎日そろって練習できるわけではなく、全体練習より個別練習が主となる。こうしたなかで選手たちは「限られた時間の使い方を覚えた」と本西監督は話す。

都市対抗には出場できなかったチームから力を貸してもらう補強選手の制度がある。補強選手をどう生かすかが、本戦で勝ち上がるための第一条件、と本西監督はみる。

自ら補強選手となったこともあるが、補強選手に定位置を譲った経験もある。「1番打者でやっていたのに、本大会では守備固めになっちゃって」。補強選手に気持ちよくプレーしてもらうための気配りも必要だが、あおりを受けるかもしれない選手のケアも大事だ。社会人野球出身監督の腕のみせどころだ。

27年に始まる都市対抗野球は今年で91回目。戦後復興や高度成長の一翼を担った「糸へん」と言われる繊維産業や炭鉱チームの時代があり、重工業、自動車、エネルギーと、都市対抗の担い手たる企業の顔ぶれは産業構造の変遷を映してきた。デイサービスを主とするハナマウイの出場も日本の今の"素顔"を映すのかもしれない。

YBC柏は柏市の企業がサポートするなど地域代表の色が濃い

YBC柏は柏市の企業がサポートするなど地域代表の色が濃い

あと一歩で初出場を逃したYBC柏は柏市出身の元中日、谷沢健一さんが主宰するクラブだ。地元の有力企業などが選手を受け入れており、地域代表の色が濃い。

少子高齢化時代を受けたサービス業界の成熟、あるいは地方の活気あるまちづくりの反映とみれば、富里市、柏市といった新勢力の台頭は興味深い。

今年の都市対抗は11月22日~12月3日の予定で、東京ドームで開催される。

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