増えるウーバーイーツ配達員 賠償やケガの補償は?
生保損保業界ウオッチ

特約や補償範囲などが商品によって異なる保険の比較はなかなか大変。この連載では保 険に詳しいファイナンシャルプランナーが商品選びの勘どころを紹介する。
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第三者への損害賠償はウーバーが補償、上限は1億円
オンライン登録をすると近所の提携飲食店が表示され、注文後に配達員が食事を届けてくれる「ウーバーイーツ」。新型コロナ感染拡大による外出自粛でニーズは急拡大のもよう。最近は街中で配達員を見かけない日はないほどです。配達員になるのは簡単で、オンラインで登録するだけ。自転車とリクエストを受けるスマートフォンがあれば業務を始められます。
空き時間に仕事を選べ、報酬は週払い。バイトが減った学生のニーズにも合致しているようです。ただしウーバー配達員は被雇用者ではなく、業務を請け負う個人事業主。労働者としては守られません。参入は簡単でも、事故等、トラブル時の対応を十分理解し、慎重に臨む必要があります。
配達業務に関しては、他人への損害賠償と自らの死傷のリスクがあり、それぞれについてウーバーが補償を提供しています。事前申し込みや保険料は不要で、自動的に補償が適用されます。
まず損害賠償のリスク。配達中に歩行者にぶつかりケガを負わせた、商品の受け渡し時に料理をこぼして注文者にやけどを負わせたなどして法律上の損害賠償責任を負った時は、1億円を上限に補償されます。ただしバイクや軽自動車で業務を行う配達員の交通事故は、自ら加入する自動車保険を使うのが基本。さらに保険会社による示談交渉サービスは原則として受けられず、配達員自らが被害者と示談交渉する必要があります。
示談交渉サービス付きの個人保険加入で備えを万全に
また、配達員の死傷は労災の対象外なので、ケガをしたら保険診療を受けましょう。交通事故なら加入する公的医療保険に「第三者行為の届け出」の提出を。ウーバーからは死亡・後遺障害、医療費や入院に関する見舞金・一時金が提供されます(下表参照)。
ただし賠償・死傷いずれも補償されるのは配達リクエストを受諾した時から配達完了、またはキャンセルを受諾した時までの事故のみです。配達完了後、次のリクエストが来るまでの事故は補償されないため自衛が必要です。自動車やバイクを用いるなら自動車保険の補償を万全に。いずれの手段で配達を行う場合でも示談交渉サービス付きの個人賠償責任保険に加入しましょう。ただし、次のリクエスト受諾までのオンライン待機中を業務として対象外にする保険もあるので、加入の際には確認を。

学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『どんな災害でもお金とくらしを守る』(小学館クリエイティブ)など著書多数。FP&社会福祉士事務所 Office Shimizu 代表。
[日経マネー2020年12月号の記事を再構成]