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日米欧中銀、デジタル通貨発行へ「共通3原則」

先進国の中央銀行グループは9日、中銀の発行するデジタル通貨(CBDC)の報告書をまとめた。背景には社会のデジタル化の加速で発行に向けた機運が一段と高まっていることがある。現金がデジタル通貨に置き換われば利便性は増す半面、経済活動や金融機関の経営などに多大な影響を及ぼす。先行する中国をにらんで主要中銀が歩調を合わせ、発行時の混乱を防ぐ狙いがある。

今回の報告書はCBDCを発行する場合の3つの基本原則を提示した。

まずは各中銀が政策目標とする物価の安定や金融システムの安定を損なわないという点だ。例えば金融危機が起きた場合、資金移動が容易なCBDCが普及していると銀行預金の引き出しが急速に進み、銀行の経営不安を高めるリスクがある。

平時においても銀行預金から保存がしやすいCBDCに資金が流れる可能性が指摘される。預金をもとに貸し出しなどを実施する銀行のビジネスモデルが揺らぎかねない。各中銀はこうした事態が生じないような制度設計が必要との考えだ。

2つ目は現金や他のタイプの通貨との共存だ。現金に限りなく近い利便性のCBDCを発行する場合でも、災害時に使えないといった問題が生じる可能性がある。「CBDCが実現してもかなりの期間、現金と併用される」(日銀幹部)というイメージを持つ当局者は多い。

3つ目は決済分野の技術革新や効率性の向上だ。国内外ではすでに民間企業や金融機関によるデジタル通貨が多く発行・流通している。CBDCが発行後にこうした民間デジタル通貨に取って代われば、技術革新をけん引する民間の活力をそぐ恐れがある。中銀と民間による競争と協調が必要になる。

「今回の報告書は実行可能なCBDCのさらなる検討に向けた発射台になる」。日米欧中銀の研究グループの共同議長を務めた国際決済銀行(BIS)イノベーション・ハブ局長のクーレ氏はこう話す。各中銀は合意した共通理解をもとに実証実験に入るなど、より具体的な準備を進める。あらかじめ原則を共有することで将来的に国際送金などで連携を進めやすくする狙いもある。

日銀や欧州中央銀行(ECB)など6中銀とBISは1月に研究グループをつくり、年内の報告書発表をめざして協議を重ねてきた。当初はCBDCを独自に研究するとして距離を置いていた米連邦準備理事会(FRB)も途中から参画した。日米欧の主要中銀がそろい踏みになったことで、報告書の実効性が高まったとの見方もある。

日米欧の協調姿勢の裏には、すでにデジタル人民元の実践的な実験段階に入っている中国への焦りや対抗意識も透ける。中国の築いたデジタル通貨の仕組みが貿易相手の新興国などにいち早く普及し、技術面の国際標準を握られれば、先進各国には不利になる。CBDCの普及後の世界でも西側の開かれたシステムを守る意図がある。

CBDCの議論を活性化する呼び水になった米フェイスブックによるデジタル通貨「リブラ」の構想は、各国当局が早期の発行に待ったをかけたことで動きが鈍っている。ただ、世界各国の政府や民間企業によるデジタル通貨の開発は今後も広がる公算が大きい。日米欧は各国の通貨主権を守りつつ、グローバル化やデジタル化に対応した決済・金融システムの確立をめざすという難しいかじ取りを迫られている。

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