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EU、貿易協定で環境対策要求 域内企業の競争力を維持

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は自由貿易協定(FTA)で相手国や地域に環境対策を要求する。EUの環境基準を求め、域内企業が相手国・地域企業との競争で不利にならないようにする。政治合意した南米南部共同市場(メルコスル)とのFTAでも、森林保護の不備を理由に、EU主要国が批准に反対している。

火災などでアマゾンの森林は急速に減っている=ロイター

「EUの批准前にメルコスルのきちんとした対応が必要だ」。欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)は10月初旬にこう力説した。足かけ20年の交渉の末、19年6月に政治合意したFTAが宙に浮いたままになっている。

理由はEU加盟国が協定案に盛り込まれているアマゾンの森林消失を食い止める規定が履行されていないと見ているためだ。実際、ブラジル国立宇宙研究所によると、1~9月のアマゾンでの森林火災は前年同期比で14%増えた。違法伐採も止まっていない。

反対するのは環境保護への取り組みを強く要求する北欧諸国にとどまらず主要国にも広がる。フランス政府は9月、現状の協定案に反対すると表明し、交渉再開のための条件をEU各国と協議している。EU議長国で域内最大の経済大国ドイツのメルケル首相も8月、「重大な疑念がある」と慎重姿勢を示した。

ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイで構成するメルコスルとEUのFTAは、発効すれば人口で7億人に達し、世界の国内総生産(GDP)の2割程度を占める。双方に経済効果は大きいと期待されるが、欧州ではメルコスル側が積極的な対応を取らない限り、批准は難しいとの判断に傾きつつある。

メルコスルだけでなく、EUはFTAをテコに気候変動など域内で進めている環境対策を相手国や地域に要求する姿勢を鮮明にしている。根底にはEUと他国の環境規制が大きく異なると、短中期的にコスト競争力でEU側が不利になるとの危機感がある。

EUは50年に域内の温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げ、域内の環境規制を厳しくしている。域内外で規制に大きな差があると、緩い規制を求めて企業が域外に流出しかねない。EUは対策の十分でない国でつくられた製品に関税をかける「国境炭素税」を検討する一方、通商外交を通じて他国の環境対策の取り組みを促す。

19年2月に発効した日本との経済連携協定(EPA)や同年11月のシンガポール、20年8月のベトナムとのFTAには地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の着実な実行を明記した。EUは今後結ぶFTAには環境や持続可能性を扱う章を設ける方針で、交渉中のオーストラリアやニュージーランド、インドネシアなどとも協議しているようだ。

欧州委貿易総局の幹部が19年、「EUは国際政治の武器として貿易を使う」と語って話題になったことがある。FTAではないが、EUは20年8月、カンボジアの民主主義や人権状況を問題視して優遇制度を停止、衣類など一部関税を引き上げた。

EUの基本的価値観を損なったり、域内企業にとって不利になる状況をもたらしたりする国に貿易を使って圧力をかける姿勢は今後も強まりそうだ。ただ、EU側が環境などの高い基準を相手国や地域に求めれば、交渉が長期化したり、まとまらなかったりする恐れもある。

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