/

世界食糧計画(WFP)にノーベル平和賞 飢餓撲滅に尽力

(更新)
2020年のノーベル平和賞は世界食糧計画(WFP)に決まった=ロイター

【ロンドン=佐竹実】ノルウェーのノーベル賞委員会は9日、2020年のノーベル平和賞を国連世界食糧計画(WFP)に授与すると発表した。シリアやイエメンなどの紛争地域を中心とした食料支援や、飢餓撲滅に向けた活動が評価された。紛争解決への取り組みだけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大による食料不足への対応も認められた。

WFPは1961年創設の国連組織で、イタリアのローマに本部がある。紛争地に食料を供給したり、途上国の学校で栄養価の高い給食を提供したりするなど、世界88カ国9700万人に対して食料援助や緊急支援を行っている。

レイスアンデルセン委員長は「飢餓と闘い、紛争地域での食料の安全保障に貢献し、飢餓が戦争の武器として利用されることを防ぐ重要な役割を果たした」と授賞理由を述べた。

同委員長は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が「世界で飢えの犠牲者を急増させている。パンデミックに直面する中、WFPは(飢餓と闘う)努力を強化している」と説明した。

WFPは決定を受け、ツイッターで「平和と飢餓ゼロが密接に関係していることを世界に強く思い出させるものだ。世界中の飢餓に苦しむ子どもや女性、男性に食料と支援を届けるために、命をかけて活動しているスタッフの活動の努力が認められた」と投稿した。

デービッド・ビーズリー事務局長も、ツイッターに投稿した動画で「スタッフは、世界各地の厳しい場所で活動しており、彼らにふさわしい賞だ」と喜びを語った。

新型コロナの感染拡大を受けた都市封鎖などの施策は、失業など社会の混乱をもたらした。特に途上国では貧困や食料不安が広がる懸念がある。WFPは活動国で飢餓に苦しむ人の数が年末までに、パンデミック前と比べて8割増の2億7000万人に達すると予想している。こうした現状を受け、WFPは20年の支援対象者を前年比約4割増の1億3800万人に増やす計画で、過去最多の規模となる。

国連は30年までの持続可能な開発目標(SDGs)の一つとして「飢餓ゼロ」を掲げているが、その道のりは険しい。

WFPによると、世界の飢餓人口は約8億2100万人と増加が続いており、9人に1人が飢えに苦しんでいる。1億5000万人以上の子どもが発育障害の状態で、WFPは「国連の目標達成は厳しさを増している」と警告する。

難民の数も増え続けている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、19年末時点で過去最多の7950万人にのぼる。シリアだけでなく、南スーダンの紛争や、ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャの迫害などで各地で難民が大量に発生している。

課題は活動資金の確保だ。WFPなどの支援機関はほとんどを各国政府や民間からの自主的な寄付に依存する。WFPは過去に財源不足でシリア難民への食料給付を大幅に減らしたこともある。

米国のトランプ大統領は18年に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出の全面凍結を表明。国連への最大の資金拠出国である米国の国連軽視の姿勢は著しく、今後、WFPの活動がさらに困難になる懸念は強い。

レイスアンデルセン委員長は9日の記者会見で「グローバルな危機に立ち向かうには多国間の協力が重要だが、多国間主義は尊重されていないようだ」と指摘した。国際協調と距離を置くトランプ米政権をけん制した形だ。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン