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公認会計士 山田真哉さん

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2020/10/28 2:00
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2005年に出版した『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』がベストセラーとなった山田真哉さん。公認会計士として活躍しながら、テレビやラジオへの出演もこなす。最近は動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」でも積極的に発信。お金の知識を分かりやすく解説し、チャンネル登録者数は13万人を超えた。そんな山田さんが家庭で実践しているマネー教育とは。

山田真哉(やまだ・しんや) 公認会計士、税理士。大阪大学文学部卒業後、「東進ハイスクール」を運営するナガセを経て、公認会計士資格を取得。2020年のTBSドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」では経理監修を務めた。

山田真哉(やまだ・しんや) 公認会計士、税理士。大阪大学文学部卒業後、「東進ハイスクール」を運営するナガセを経て、公認会計士資格を取得。2020年のTBSドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」では経理監修を務めた。

■求められているマネー情報をタイムリーに届ける

──ユーチューブでの発信を始めたのはいつからでしょうか。

2018年末頃からです。テレビの準レギュラー出演が終わって時間ができたので、何か始めようと思ったのがきっかけでした。コロナ禍では、持続化給付金の申請方法に関する動画の再生回数が大きく伸びました。

書籍を多く出してきた身として感じるのは、動画の世界はかなりスピード感が重視されているということ。「今、この情報が欲しい」という需要に対して素早く応えていかなければなりません。

──お父さんの活動に対し、10歳の娘さんの反応はいかがでしょう。

娘は僕の動画をよく見ています。チャンネル登録者数の推移はすごく気にしているようです(笑)。

■ドラマやゲームがマネー教育の入り口

──動画を見るだけでも十分勉強になりそうですが、家庭ではマネー教育をしていますか。

僕ではなく妻が意識的に行っていることなのですが、テレビやゲームで出てきたお金の話題は丁寧に教えるようにしています。例えば最近ではドラマの「半沢直樹」。ドラマのエピソードに沿って、「企業はどのように資金を集めているのか」などを説明しました。妻は銀行出身なので、内容も本格的です。

──お金の英才教育ですね。

他にも、「ニンテンドースイッチ」のゲーム「あつまれ どうぶつの森」で株取引のようなものが出てきた際には、株式市場の仕組みについて教えていました。娘は妻から「前場・後場」「指し値(さしね)・成行(なりゆき)」といったキーワードも学んだようです。果たして10歳の子供が今すぐに必要な知識なのかというと少し疑問ではありますが……(笑)。

──そうした言葉を一度でも聞いたことがあれば、投資に親しみが持てます。

実際に娘は株取引に興味を持つようになり、株のデモトレードアプリで実践するようになりました。まさか本当に興味を持つとは思わなかったのですが。シミュレーションで買っている株は誰でも知っているような身近な企業の銘柄が多いですが、いい勉強になっているはずです。

──今から学んでいれば、将来投資家として成功するかもしれませんね。

ただ、親としては「将来は必ず株で資産運用しろ」と押し付けるつもりはありません。色々と知識を吸収したうえで、自分で判断してほしいと考えています。

大切なのは、身の回りのお金の話だけではなく社会全体のお金の流れを教えてあげること。「お小遣い帳をつけよう」という教育も大事ですが、そうした小さなお金の話だけでは不十分です。エンタメは社会のお金について学ぶきっかけを与えてくれることが多いので、我が家ではテレビやゲームを禁止しないようにしています。

──確かに小学5年生が株取引などの話題に触れる機会は、学校生活ではほとんどありません。

そうですよね。加えて社会のトレンドを知るという意味でも、エンタメは重要だと感じます。大人になって仕事をする際には、どんな職種であっても世の中の潮流を知っていることは役に立つと思います。僕自身、「今はYouTubeが勢いがあるらしい」という情報を早めにつかんでいたからこそ、他の人よりも少し早く動画の世界に参入することができました。

──子供のためだと思ってあれこれ禁止してしまうと、世界が狭まってしまうこともあり得ますね。

テレビやゲームを禁止して、勉強をさせるというのも、親心だと思います。どうするかは親の価値観次第でしょう。我が家では「一般の小学5年生がやっていること」を体験させ、世の中ではどんなものが流行しているのかを知ってもらうことを大切にしています。そうした経験がトレンドをつかむ力を育んでくれる。いつか自分の武器になったと感じてくれたらうれしいですね。

■最も重要なのは稼ぐ力

──「ためる」「殖やす」「稼ぐ」など、お金を得る方法は様々ですが、一番に重要視されているのはどの力でしょうか。

「稼ぐ」です。最も裏切らないというか、努力が実りやすい面があると思うので。また、稼ぐ力があれば何とか生きていけるだろうと思います。僕自身は公認会計士の資格を取ることで稼ぐ力を得たのですが、娘は将来何を稼ぐ力にしていくのだろうと楽しみでもあります。世代が違えば、職業の選択肢も変わってくるのでしょうし。

──山田さんは以前、FX(外国為替証拠金)取引で5500万円の損失を出した際に「仕事で稼ぐ大切さ」を実感されたそうですね。

FXを始めたのは『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の本を出した少し後のことです。スワップ狙い(通貨の金利差から発生する「スワップポイント」という金利収入を得ること)が目的で、最初はうまくいっていました。ですがリーマン・ショックの直前、米サブプライムローンショックに巻き込まれてしまったのです。

「金利収入がずっと定期的に入る」といった夢のような話は、そう実現しないですよね。それは宝くじが当たるようなもので、頼らない方がいいです。着実に仕事で稼ぐ大切さを再認識しました。

──ですが、その経験をきっかけに税理士登録をされて現在の事務所を開かれた。

やはり投資だけではなくて仕事も頑張りたい、ということで事務所を立ち上げました。FXで損失を出したことも、最終的にはいいきっかけとなってくれたのです。

娘にも「仕事をするのは楽しいよ」と伝えていきたいですね。ビジネスは、誰かに喜ばれて対価としてお金をもらうもの。それはとても幸せなことだと思うのです。我が子も自分でお金を得る方法を考えられる人間に育ってほしい。

■会計学に必要なのは数字の読解力

──お小遣いは与えていますか。

今は与えていません。僕と妻それぞれの両親が時々娘にお小遣いをくれるので、それで好きなものを買ったりしているようです。お小遣いはないですが、本はなるべく多く買ってあげるようにしています。読書で国語力を培ってくれればと思います。

──ご自身は過去に、予備校で現代国語の講師をしていた経験があるそうですね。

あらゆる教科の中で国語が最も重要だと考えています。日本語という言語自体が重要だというより、物事を理解する際のベースとして国語力の必要性を感じます。どの分野を勉強するにしても、それについて説明している文章の意味が分からなければ始まらない。

理想は、自分で文章が作れるようになってくれること。「物事を言葉で表す」という作業は、頭の中でそのロジックを組み立てることができていないと難しいからです。会計学も読解力です。"数字を読解する力"が求められます。例えば「売り上げから経費を差し引いたら利益だ。だからこの数字の意味するところは……」という形で数字を言葉にして考えていく。

──社会全体のお金の流れや経済の仕組みを理解する際にも、国語力が必要です。

政府が打ち出した税金についての新しい制度などを理解する際にも、文章を読むという過程は避けては通れないですからね。そういった意味でも、国語力を磨くことは一種のマネー教育かもしれません。たくさんの文章に触れることが、娘の将来に役立てばと思います。

(大松佳代)

[日経マネー2020年12月号の記事を再構成]

日経マネー 2020年12月号 秋相場は大化け期待の中小型株を狙え! 最強の成長株

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/10/21)
価格 : 750円(税込み)

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