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「コロナ後、スーツはもっと自由になる」鴨志田康人氏

オリーブのスーツにピンクのシャツ。ゆるく結んだネクタイ。絶妙な色合わせを得意とする鴨志田康人さん

コロナショックの巣ごもり期間中、服の整理をしたという話をよく耳にする。そこで再発見した「忘れられたお気に入り」の数々。ワードローブに長年眠っていたゆったりシルエットのシャツが新鮮にみえたり、今着たくなるダブルジャケットが見つかったり。リモートワークが浸透し、おしゃれの優先順位は低くなったかもしれないが、「今こそが、本当に着たい服を見つめ直す好機」だとファッションディレクターの鴨志田康人さん(オフィスカモシタ代表)は言う。ポール・スチュアートの日本におけるディレクターで、このほど発表した2021年春夏コレクションラインでは「Old is New」をテーマに、遊び心あふれるカジュアルアイテムを提案する。日本の男性はこれからファッションとどう付き合っていくのか。鴨志田さんの考えを聞いた。




自粛生活で… 男の服の「価値」再確認

――長い自粛生活の間に服を整理した人が多くいます。

「僕もすごく整理しました。捨てるものがこんなにあるの、と驚きました。えてして洋服の仕事をしている人は、自前の服を捨てずにアーカイブとして取っておくことが多いんです。価値のあるものはもったいないし、いま見てもいいな、と思うものは古着店に売りました。その古着店を見ていて感じますが、80年代はルーズフィット気味のシャツなど、今の気分に合うアイテムが多い」

「色だったりフォルムだったり、メンズはとくに、ちょっとしたディテールの差が時代を映しています。処分しようかどうか真剣に手持ちの服を見直していくと発見がいっぱいあって、すごく楽しかった。そうして、ずっと着続けたい服はこういうものだなってことが、改めて分かりました」

「アンコンジャケットはダブルが新鮮だと思います」

「自分が作ったもの、買ったもの、バイイングしたものも含めて、クオリティーのいいもの。時代を超越したデザインのもの。当たり前なんだけど、男の服はそこに良さがあることを思い知らされました。そして、そういう服を作っていかないといけない立場なんだと痛感しました。これからはカジュアルアイテムでも、年齢も時代も問わず、ずっと着続けられるようなものを作りたいなって」

――メンズの服でもカジュアル化が進んでいます。大人が着るのにふさわしいカジュアルとはどんなものでしょうか。

「たとえば、このマネキンが着ているリネンマドラスのシャツ(1ページ目トップ写真)や、リバティプリントのアーカイブをアレンジしたパジャマみたいなパンツ。涼しいサファリジャケットやシャツジャケット。クリーンなピュアホワイトのパンツ。リラックスしたアイテムが盛りだくさんですが、いずれも素材にめちゃくちゃ凝っています」

1枚でサマになるシャツも充実させた

大人に合うカジュアル 「リラックス」がキーワード

――しゃれた色使いや遊び心が鴨志田さんの持ち味ですが、どんな思いを込めていますか。

「これからは『リラックス』が絶対のキーワードです。バンドカラーのシャツはちょっとパステル調の色にして、しゃれたストライプにすることで、カジュアルだけどエレガントな雰囲気がでるようにしました。若い層向けにいっぱい出回っているアイテムを、デザインや生地の使い方で、大人が着られるものとして作っています。カーディガンぽいジャージーのジャケットも肩の力が抜けていいですし、ネイビーのアンコンジャケット(1ページ目下の写真)はダブル仕様で新鮮に。白のTシャツにはおるだけで雰囲気が出ます」

リラックスした雰囲気のジャケット

「ドレス系ではこちらのバニラカラーのスーツのようにリゾートで着たり、遊びで着たりできるもの。タイドアップしなくても着られる、だけど決して時代に流されないようなものを意識しました。大人が楽しむ、社交性のあるドレスという思いを込めています」

――服の売れ行きが落ち込んでます。おしゃれへの関心が低くなっているのでしょうか。

「ファッションの役割って生活の中で不要不急かもしれませんが、アートと一緒で人生を豊かにするものなんです。日本人は身の回りのものこだわりますよね。部屋に置く工芸品一つにしてもそうで、そこに生活の豊かさや楽しさを感じることが身についているのではないでしょうか。アメリカは今、おしゃれするのはかっこ悪い、みたいな風土になっているけど、日本は絶対そうはならない」

バニラカラーのスーツなど遊びに着たいスーツ

――業界ではスーツ離れも指摘されています。コロナ禍のもとでの仕事の装いにはどんな考えをお持ちですか。

「みんながカジュアル化して、ビジネスマンがスーツを着なくなると、逆に、スーツってかっこいいなと思える時代になっていくと思います。社交的に人と遊んだり、コミュニケーションをとったりするうえで、よそ行き服としてのスーツがクローズアップされ、きっと必要なアイテムになっていくでしょう」

ファッションは相手への「態度」映す面も

――ハレのスーツということですか。

「そう。装いはメリハリがないと、つまらない。スーツはもっともっと自由になっていくはずです。80年代、僕らが若い頃は色もののスーツしか着ませんでしたよ(笑)」

「社会人、男性として、生活の中でいろいろな人とコミュニケーションをとるなかで、装うということは自分のアティテュード(考え方)をいかに表現するかということにつながります。日本ではまだまだ、おしゃれをネガティブ、余計なことととらえがちな人が多いのですが、装うことを恥ずかしがらずに、自分を生かすということ、人から見られている、ということをもっと意識してほしいですね」

復刻させたスキージャケット。エスニックな雰囲気のプリントシャツ。大人が楽しめるアイテムがそろう

――自分らしさというものに向き合って、ファッションを楽しむということでしょうか。

「そう。もっと装いを楽しんだ方が人生も生活も楽しめます。そして、自分のためでもあるけど、相手を喜ばせる、相手を敬うというのもファッションの役目。相手のために装うということを忘れちゃいけないと思います。あとは、個性を出し過ぎるのもどうかなとは思いますが、個性をポジティブにとらえるのが、装い方でもあるんです」

――鴨志田さんは自分の個性を守りつつ、どうやってセンスを磨かれていったのですか。

「たとえば、僕はネクタイをリラックスした感じで結びます。かちかちした感じは好きではない。自分の体形や持ち味を生かすように考えていくと、自然と自分に似合うようになっていくのです。メンズのスタイルは何十年も変わりません。そこから自分流にいかにアレンジしていくのか。ちょっとしたことで見栄えがする。料理のスパイスと一緒で、ベースをどう味付けするのか、考えるのも楽しいですよ」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

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