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福島第1処理水の海洋放出 政府、早期判断探る

福島第1原発の敷地内に並ぶ処理水を入れたタンク

経済産業省は8日、東京電力福島第1原子力発電所で増え続けている処理水の処分について、全国漁業協同組合連合会などから意見を聞いた。地元など関係者からの意見聴取はほぼ終了した。関係者には慎重な声が多いが、敷地内のタンクの残り容量は少なくなっており、政府は海洋放出への判断を迫られている。

処理水は、福島第1で汚染した水から主要な放射性物質を取り除いたものだ。放射性物質トリチウム(三重水素)を含む。通常の原発でもトリチウムを含む水は発生する。濃度を基準値以下に下げて海に流すことが国際的に認められており、国内外の原発などは放出している。

ただ福島第1は事故で汚染された原子炉を通った水を処理している。福島県の漁業関係者などは風評被害に悩まされているため、敷地内に設置したタンクにため続けてきた。国際原子力機関は海洋放出について「技術的に実行可能で国際的慣例にも沿う」との見解を示している。

4月に始めた関係者の意見聴取は今回が7回目で、全漁連と福島県水産加工業連合会から意見を聞いて一巡した。全漁連の岸宏会長は「海洋放出されれば、風評被害は極めて甚大になり、漁業者の努力が水泡に帰す」と反対姿勢を強調した。福島沿岸の漁業は今も試験操業で、19年の沿岸漁業の水揚げ量は約3600トンと事故前の約14%にとどまる。

福島県漁業協同組合連合会は21年4月の本格操業開始を目指している。漁業関係者は新たな風評被害の発生を懸念する。

一方で福島第1が立地する双葉、大熊両町の議会は9月、処理水の処分方法を早期に決めるよう政府に求める意見書を相次ぎ可決した。海洋放出には言及していないものの、廃炉による復興の実現には処理水の処分が避けられないという認識だ。福島県の内堀雅雄知事は賛否の明言を避けており、温度差もある。

処理水の保管を続けるのは難しくなっている。敷地内のタンク1000基には約123万トンたまる。20年中に計137万トン分のタンクを確保するが、22年10月にも満杯になる見通しだ。

政府は全漁連など関係者からの理解が得られるよう説明を重ねる。菅義偉首相は9月「できるだけ早く政府として責任を持って処分方針を決めたい」と表明した。

政府は関係者の懸念に配慮し、風評被害対策や被害が出た際の補償について検討を進める。これまで出た意見も整理して公表する予定だ。政府内、関係者との調整を経て、関係閣僚会議で海洋放出を決定する公算だ。放出の準備には約2年かかる。すでに時間はなく、菅首相の言うように早期に判断できるかが焦点だ。放出が始まるのは22年度以降となる。

福島第1の廃炉作業は今後本格化する。タンクが増え続ければ作業場所の確保も難しくなる。政府・東電が目指す41~51年の完了時期も遅れる恐れがある。

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