米、アリババ系金融アントの制裁検討 米報道
米ブルームバーグ通信は7日、トランプ米政権が中国アリババ集団傘下の金融会社アント・グループに対する制裁を検討していると報じた。同社の決済システムが米国の安全保障の脅威になっているとの懸念があるという。具体化するかは不透明だが、実現すればテクノロジーを巡る米中対立は一段と深刻になる。

アントはスマートフォン決済サービス「支付宝(アリペイ)」を手掛け、世界で10億人が利用している。米ニュースサイトのアクシオスによると、米国内でも2019年時点で400万人以上が使っていた。米政権はアリペイを通じた決済関連データが中国政府に渡る可能性を警戒しているとされる。
アントは上海と香港で上場を目指している。新規株式公開(IPO)に伴う調達額は最大で300億ドル(約3兆1000億円)と過去最大になる可能性が指摘されている。上海証券取引所は上場を承認済み。米国による制裁検討は投資家の判断にも影響を与えそうだ。
ブルームバーグの報道では、中国ネット大手、騰訊控股(テンセント)の決済システムも制裁の検討対象となった。制裁案は事務レベルで検討を進めている段階で、トランプ大統領に提案はされていないという。
米政権はデータを扱う通信、スマートフォンのアプリ、クラウドサービスなどで中国企業の排除を目指す「クリーンネットワーク」計画を掲げる。8月にはトランプ大統領が動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」やテンセントの対話アプリ「ウィーチャット」の利用を実質的に禁じる大統領令に署名した。
ただ、アプリの利用禁止措置は表現の自由などを侵害しているとの訴えが相次ぐ。配信停止の直前で連邦地裁が差し止め命令を出し、ティックトックやウィーチャットは現在も利用可能な状態が続いている。