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サムスン、ネット販売シフト スマホ回復で58%増益

旗艦商品の発表会もオンラインのみで開催した(8月)

【ソウル=細川幸太郎、広州=川上尚志】韓国サムスン電子のスマートフォン事業が急回復している。ネット販売へのシフトにより7~9月期の出荷台数は新型コロナウイルスの拡大前の水準に戻り、連結業績の拡大に寄与した。店頭販売に比べコストが少ないこともあり、今後もネット戦略に力を入れる方針だ。スマホの小売事業者は対応を迫られる。

8日に発表したサムスンの2020年7~9月期の連結決算(速報値)は、営業利益が前年同期比58%増の12兆3000億ウォン(1兆1260億円)だった。売上高は6.5%増の66兆ウォンと、過去最高だった17年10~12月期に並ぶ水準だった。

部門別の正確な業績は10月末の発表を待つ必要があるが、増益をけん引したのはスマホ事業とみられる。

韓国SK証券の分析では、スマホ事業の営業利益は前年同期比52%増、4~6月期に比べると2倍以上の4兆4500億ウォンになった。6年ぶりの高水準だ。出荷台数は8千万台と4~6月比で5割増え、新型コロナウイルスの感染拡大前の水準に戻った。

スマホ急回復の原動力となったのがネット販売だ。米国などの自社サイトでは、自社が提供するローン利用などを条件に50%引きをうたったケースもある。従来は商品紹介中心だったが、チャット機能を充実させるなど、購入時の事務手続きに伴う消費者のストレスを減らす工夫もした。

米アマゾン・ドット・コムなど、卸売先のネット通販大手や通信会社とも大幅な割引キャンペーンを打ち出した。

韓国KB証券によると、サムスンのスマホを中心とする消費者向け商品のネット販売比率は、7~9月期に40%と前年同期の15%から急上昇した。実店舗での販促物配布や過剰在庫が減少。新製品発表会などもオンライン開催としたことで、ネット上の販促費を勘案しても「マーケティング費用が抑制された」(証券アナリスト)。

コロナ禍を契機としたネットシフトは「今後も加速させていく」(サムスン幹部)。8日にはネット販路に特化した「ギャラクシーF」シリーズをインドで発売した。3つのカメラを備えつつ価格は2万円台に抑えた。最高性能の「ノート」と「S」シリーズ、ミドルクラスの「A」シリーズに続く水準で、新興国向けに機能を絞った「M」シリーズよりは格上という位置づけだ。

インドは世界2位のスマホ市場だが、都市封鎖が長引き、スマホのネット販売比率が5割に迫る。インドで消費者の反応を見極めたうえで他国にも展開する計画とみられる。

ネット販売は同業他社も注力している。米ストラテジー・アナリティクスの7月時点の予測によると、世界のスマホ販売に占めるネット経由の割合は、19年の24%から20年は28%まで上昇する。ただ、個別の悪材料が逆風となっている。

4~6月にサムスンを抜いて世界首位に躍り出たファーウェイは米政府の規制強化が直撃。半導体の調達が厳しく制限されたことでスマホの生産調整を余儀なくされ、7~9月は失速した可能性が高い。そもそも19年5月以降は新機種に米グーグルの主なアプリを搭載できなくなり、中国以外ではシェアをジリジリ落としていた。

4~6月は中国市場が新型コロナの影響からいち早く回復したという特殊要因が大きかった。

小米やOPPO(オッポ)は、中印の国境紛争をきっかけとしたインドでの中国製品の不買運動が影を落とす。香港の調査会社カウンターポイントによると、6月にサムスンがインドで小米から首位を奪還。3カ月連続でトップシェアを維持しているという。

高性能スマホで競合する米アップルは、例年9月にiPhoneの新製品を発表するが、部品調達の難航などで今年は遅れている。米中のライバルが足踏みを強いられる中で、サムスンはネット戦略が奏功しコロナ禍の低迷からいち早く脱しつつある。

サムスンなどスマホ大手のネット販売シフトは小売店に大きな影響を与える。短期間で急速に普及したスマホは、メーカー直営のほか通信会社や家電量販店、専門店など多様な販売経路があり、競争関係も複雑だ。メーカーの要請に沿ったネット対応ができるかどうかは存続にも関わる経営課題になりそうだ。

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