寄付募集 音楽の魅力訴え 苦境の在阪4楽団(上)
文化の風

関西タイムライン
2020/10/9 2:01
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関西フィルの会見には元阪神タイガースの掛布雅之(右)や俳優の辰巳琢郎(左)も駆けつけた。中央は首席指揮者の藤岡幸夫(大阪市北区)

関西フィルの会見には元阪神タイガースの掛布雅之(右)や俳優の辰巳琢郎(左)も駆けつけた。中央は首席指揮者の藤岡幸夫(大阪市北区)

コロナ禍でオーケストラが苦境にあえいでいる。関西フィルハーモニー管弦楽団や大阪フィルハーモニー交響楽団など、在阪主要4楽団の公演中止・延期による売り上げの減少幅はそれぞれ2億円に達し、当面の資金繰りも苦しい状況が続く。活路として注目されるのがクラウドファンディング。各楽団は手探りの試行錯誤を重ねている。

危機チャンスに

先陣を切ったのは関西フィルだ。8月19日から11月末までの期間限定でクラウドファンディングを始めた。初日には返礼品を提供した元阪神タイガースの掛布雅之や俳優の辰巳琢郎も会見に駆けつけた。首席指揮者の藤岡幸夫は「クラウドファンディングはクラシックファン以外にも楽団の名前を売るチャンス」と笑顔で語った。

関西フィルは特に経済界との結びつきが強い。楽団の顔である藤岡は明朗闊達で経済人の受けが良く、顔も広い。楽団と藤岡のツテを最大限活用し、華やかな返礼品を用意した。掛布の使用済みユニホームやサイン入りバット(現在はいずれも終了)、サントリーなど関西の支援企業提供の商品、楽団による社歌・校歌の録音などだ。

話題性を強く打ち出した背景には、コスト削減の思惑もありそうだ。通常クラウドファンディングは大手サイトに寄付金総額の2割程度の手数料を支払って情報を載せるのが一般的だが、負担を抑えるため支援企業の援助を受け無償で寄付サイトを作った。大手サイトの集客力を見込めない分、宣伝は自力でこなす必要がある。

寄付の目標額は5000万円。いち早くクラウドファンディングを開始し既に募集を終えた札幌交響楽団や山形交響楽団への寄付金額が2000万円台にとどまったのに比べると、思い切った設定といえる。4月以降、演奏収入はほぼゼロとなり、収入の減少幅は2億円。補助金と融資では補いきれない分を寄付で賄う考えで、目標達成で「今年度は生き延びられる」(浜橋元専務理事)計算だ。

大阪フィルは9月の定期演奏会で総勢100人の演奏者と独唱者を必要とするマーラー「大地の歌」を披露した

大阪フィルは9月の定期演奏会で総勢100人の演奏者と独唱者を必要とするマーラー「大地の歌」を披露した

他の3楽団もクラウドファンディングに本腰を入れる。日本センチュリー交響楽団は8月の演奏会開催のための資金調達を終えたばかりだが、新たに10月中旬から運営資金を調達する。大阪フィルも11月に開始する予定で、大阪交響楽団も事業者を選定中という。

大編成の迫力

ただ、クラウドファンディングでどの程度資金が集まるかには疑問も残る。コアなクラシックファンは二重三重の寄付の求めにどこまで応えてくれるか。クラシックに関心の薄い非ファン層の財布のひもはさらにシビアだ。

「懐事情が苦しいから助けてくれといって助けてくれる人はいない。助ける価値があることを認めてもらうのが先だ」と語るのは大阪フィルの福山修演奏事業部長。目先の支援よりも中長期のファン層固めに重きを置く中で力を入れたのがいち早い大編成復活だ。

大阪フィルの観客が求めるのが、80~100人ほどの大編成の音の迫力だ。多くの楽団が舞台上の社会的距離確保のため小編成の演目ばかり演奏するなか、7月の定期演奏会のブルックナーでコロナ前と同水準の編成にいち早く戻した。9月の定期演奏会では総勢100人でマーラーの「大地の歌」を成功させ、大阪フィルらしい大編成の完全復活を印象づけた。

「大きなホールで、圧倒的な音の洪水の力を知ってもらう。その音楽を今後も聞くためには寄付が必要だと納得してもらえるはず」(同)。正攻法の訴えがどこまで通用するか。楽団としての底力がこれまで以上に問われている。

(山本紗世)

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