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偏る物色 成長株相場の転換点?(苦瓜達郎)

三井住友DSアセットマネジメント シニア・ファンド・マネージャー

最近の日本株、特に小型株を見ていて感じるのは、日々の物色動向に偏りが大きく、かつ偏りの方向が極端から極端に振れがちということです。東証マザーズ指数に代表されるような、いわゆる成長株だけが大幅に上昇する日があるかと思えば、逆にそれらの銘柄が急落する一方で割安株は淡々と逆行高する日もある、といった具合です。市場の振れ幅の拡大は相場が転換点を迎えつつあることを示しているのかもしれない、と私は感じています。

機関投資家には毎日さまざまな情報が提供されますが、そのひとつに証券会社の計量分析担当者による相場の要因分析があります。日々の株価動向に関して、どういった特徴を持つ銘柄が大きく上昇(下落)したか、どういった指標が相場に効いているかということを分析したうえでランキング形式などでまとめたものです。私は必ず目を通すようにしています。

指標の有効性ランキングを見ると、最近は「高」の字と「低」の字がそれぞれ両側に固まっていることが多くなりました。利益に対する割安さを示すPER(株価収益率)や純資産に対する割安さを示すPBR(株価純資産倍率)、利益の成長性といった指標がいずれも高い成長株が物色されて割安株が無視される日と、逆に成長株が下落する一方で割安株が相対的に安定している日の差が極端になってきたことを意味します。

一般にはそれぞれ「グロース相場」「バリュー相場」と呼ばれますが、私は「高の日」「低の日」と呼んでいます。

私は割安株投資に徹しているので、低の日のほうが運用成績が良くなる傾向があります。低の日には「諸々の小型株指数や他社のファンドを上回らなければいけない」と考える一方、高の日は負けても大きく離されなければいいと考えて日々を送っています。

4月から6月までの回復相場においては、小型株市場の主役はマザーズ上場銘柄を中心とする成長株でした。毎日のように高の日が続き、私にとっては苦しい局面でした。組み入れている割安銘柄が売られすぎから反発することでなんとか市場全体にはついていけたものの、マザーズ指数や成長株投資を中心とする他社のファンドに対しては運用成績が大きく劣後する結果となりました。

しかし、7月に入ると、時によっては極端な低の日が出現するようになりました。上昇を続けてきた成長株が急反落する一方、割安株が相対的に安定した値動きを示し、私にとっては差を詰めやすい状況が発生するようになったのです。ただし、それらは必ずしも持続的な動きとはならず、翌週、または翌日には再び高の日に戻り、運用成績を引き離されるというのが、最近ありがちなパターンです。

高の日や低の日がなぜ生まれるかということに関しては、さまざまな意見があります。世界の回復相場を主導している米国のナスダック市場と関連しているのは確かですが、日本の小型株市場が独自の動きを示す日も多く見られるような気がします。より根本的な要因と関連させる議論として、「米国の長期金利が低下すると成長株相場になる」「新型コロナウイルス問題が深刻化すると成長株相場になる」といった説もありますが、個人的には、これらはあまり必然性の高い話ではないように感じています。

より突き放した意見を言えば、あまり本質的ではない議論が多く見られるということ自体、相場が行き詰まっているという事実を表しているのではないでしょうか。

成長株への物色の偏りは今年4月以降の回復相場で始まったのではなく、一昨年から基調として続いている傾向です。物色の偏りが長期間続いた結果、成長株と見なされた銘柄群と無視されている割安株の株価格差は歴史的な幅に拡大しています。成長株相場が行き詰まった状況で、流れに掉(さお)さす力と行き過ぎを修正しようする力が、いずれも強く働いているのが現状だと考えています。ちょうど、回転しているコマが倒れる直前に大きく振れるようなものではないでしょうか。

個人的願望も入っていますが、私は相場が転換点を迎えつつあると考えています。いずれにせよ、割安株投資に徹するという方針に変化はありません。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。
苦瓜達郎
(にがうり・たつろう)
1968年生まれ。東京大学経済学部卒業後、91年大和総研入社。アナリストとして窯業やサービス業の担当を経て中小型株を担当。2002年に当時の大和住銀投信投資顧問入社。中小型株ファンドの運用に携わる。

[日経ヴェリタス2020年10月11日付]

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