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米景気・市場に冷や水 トランプ氏、財政出動ストップ

【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領は6日、追加の景気対策を巡る与野党協議の停止を指示した。米経済は新型コロナウイルス禍からの回復途上にあるが、公的支援が切れる「財政の崖」が冷や水を浴びせそうだ。同日の米金融市場では株価も急落し、投資家は11月の選挙前後の政治の混乱に身構え始めた。

トランプ米大統領は新型コロナ対策をめぐる民主党との協議停止を指示した=ロイター

「政策支援が過小にとどまれば、長期の失業や企業の倒産が増えるだろう」。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が講演で、そう財政出動を求めた直後、トランプ氏はツイッターで野党・民主党との経済対策協議の打ち切りを表明した。

米議会は3月以降、3兆ドル(約320兆円)を超える大規模対策を超党派で成立させてきた。11月の選挙が近づくと与野党対立が一気に深まり、追加策の合意が不可能になっている。民主党は2.4兆ドルの財政出動を提案、共和党は5000億ドル規模にとどめる独自案を主張する。ホワイトハウスは1.6兆ドルの折衷案を示したが、民主党も共和党も歩み寄りを拒んだままだ。

米政権と議会が景気対策よりも政争を優先するのは「米経済は想定よりも早く持ち直してきた」(パウエル氏)こともある。FRBは失業率が20年末時点でも9%台に高止まりすると予測していたが、9月時点で既に7%台に下がった。とりわけ共和党の地盤である農業州などは、危機前に近い4%台にまで改善。ホワイトハウスでは「景気は追加対策がなくてもV字回復が可能だ」(クドロー国家経済会議委員長)と強気な意見が噴出する。

ただ、6日の米金融市場では、トランプ氏の協議打ち切りの表明で、株価が急落する混乱をみせた。ダウ工業株30種平均は前日終値比で一時200ドル超も上昇していたが、同氏のツイッターで下落に転じ、下げ幅は一時400ドルを超えた。

民主党が求めていた経済対策には、家計に大人最大1200ドルを支給する現金給付などが盛り込まれ、短期的な景気効果に期待があった。共和党案にも失業給付の積み増しなどが含まれており、経済対策が完全に白紙になれば景気が再失速する懸念すらにじむ。

実際、失業給付の積み増しが一時失効したため、8月の個人所得は前月比2.7%も減少した。9月末には航空会社の雇用維持策の期限も切れ、大手各社は数万人単位の人員カットを余儀なくされそうだ。JPモルガン・チェースは7~9月期の成長率を、前期比年率換算でプラス33%と大幅な回復を予測するものの、10~12月期は同2.5%に急減速するとみる。

トランプ氏は「選挙に勝利すれば、勤労な米国民と中小企業に絞った経済対策を可決する」とも表明した。ただ、新議会が発足する来年1月までは上下両院で与野党の「ねじれ」が続き、早期の経済対策の成立は困難だ。トランプ氏は民主党との妥協を拒んで支持基盤である財政保守派に配慮したが、景気を人質にとる危険な賭けとなる。

11月の大統領選は、大量の郵便投票の開票の遅れで勝敗がすぐに決しない可能性も指摘される。政治の混乱は市場心理を冷やし始めている。

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