中小の潜在力引き出す 東広島市のハイビズ、始動半年

広島
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サービス・食品
2020/10/7 20:00
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おカネをかけずに中小企業の売り上げを伸ばす――。この使命を担い設立された広島県東広島市の無料経営相談所「東広島ビジネスサポートセンター」(略称=Hi-Biz ハイビズ)が実績を積み上げている。ビジネス経験豊富なスタッフが「その手があったか」という提案で企業の潜在力を引き出す。設立から半年余りだが、地域活性化の推進役としての存在感を高めている。

ハイビズとの相談から生まれたアマビエの和菓子(東広島市「さくらや」)

食品スーパー「ショージ」のカツサンド新商品では記者会見の実施を提案した(東広島市)

コロナで緊急事態宣言下にあった4月末、市の中心地、JR西条駅前にある老舗和菓子店「お菓子の蔵 さくらや」に風変わりな新商品が登場した。疫病を退散させる力を持つとされる妖怪で、コロナで脚光を集めていた「アマビエ」のイラスト入り和菓子シリーズだ。ハイビズとの相談から生まれた商品だった。

店は顧客層が高齢化しコロナ禍で来店客も落ち込むなかで、新しいヒット商品を何か生み出せないかと思案していた。ハイビズ設立に伴い相談をもちかけたところ、イラストが得意な家族がいることを聞いていたハイビズ側から提案されたのがアマビエの活用だった。

そこからトントン拍子で開発が進み、イラストも自前で作成して、わずか半月で発売に結びつけた。社会環境からも話題を集め、たちまち看板商品に育った。潜在力を見いだし発揮させるハイビズの本領がさっそく発揮された。

さくらやの馬原直史社長は「ハイビズは相談内容に沿って事前にしっかり準備して対応してくれる。他の組織と比べて提案も具体的で、いつもヒントをもらえている」と感謝する。

人手不足に悩むクレーンメンテナンス会社には、ハローワークの求人票に社長のキャラクターが伝わる書き方を提案した。「そんな内容を記述していいの?」と驚かれたが「書き方に決まりはないんです」と、相談の1時間枠を使い社長自らブログを毎日更新していることや社内の明るい雰囲気が伝わる求人票を書き上げた。その結果「よさそうな会社」と受け止められ、求める人材の採用につながったという。

9月には食品スーパー「ショージ」が地元・西条の人気洋食店のソースを使ったカツサンドの商品開発を後押し。大手にはない地域密着型商品を投入して集客力を高めることを狙った。幅広く周知できるよう記者会見の実施も提案した。

優れた商品や技術を持ちながら「PRのやり方がわからない」という企業へは、メディアに情報を伝えるための手法を伝授する。「知る人ぞ知る」だけの商品から、多くの人に見つけてもらえる機会を増やすためだ。

IT活用分野の相談スタッフも配置しており、SNS活用術など「無料でできる」情報発信スキルを指南している。

■設立から半年余り、相談1100件

ハイビズの誕生は2月末。同じタイプの相談所は広島県内では福山市の「福山ビジネスサポートセンター」(フクビズ)に次ぎ2カ所目で、東広島市と東広島商工会議所が中小活性化の新たな手段として設立した。

年俸制の相談スタッフ2人は1年ごとの契約で、1年目から実績を求める体制でスタート。全国公募からセンター長にリクルートで豊富な営業経験を積んだ三嶋竜平氏、プロジェクトマネージャーに金融機関や税理士事務所でコンサルティングに携わり中小企業診断士の資格も持つ西村大氏が就任した。

9月末までの7カ月間の相談件数は1100件に達し、常時半月先まで予約で埋まる「行列ができる経営相談所」となった。事業者と取引している金融機関の職員も同席することも多い。

三嶋センター長は「さりげなく語られる技術力に『そんなすごいことができるんですか』と驚くことがよくある。東広島の中小は閉じた取引のなかで事業を進めてきたため、自社技術の強みを評価できていなかった。そこに気づいてもらい、ビジネスにつなげていくことも役目」と話す。

設立から間もないハイビズに対しては、「知恵なんて誰でもだせる」と冷ややかな視線を送る市民も少なくない。このため地域産業の底上げにつながる実績を示し続けることが欠かせない。三嶋氏は「東広島には7000の事業所がある。これまでに相談にきてくれたのはまだ350。手掛けられることはたくさんある」と意欲満々だ。

(北村順司)

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