米、年内にも就労ビザ厳格化 「H1B」対象、ハイテク業界に打撃
トランプ米政権は6日、IT(情報技術)技術者が多く利用する「H1B」ビザ(査証)の発給要件を厳しくすると発表した。雇用企業に対し賃金の引き上げを義務付けるほか、該当する専門職種の範囲も狭める。年内にも適用する。米国企業によるIT技術者の獲得に大きく影響しそうだ。

米政権と米国国土安全保障省がH1Bビザに関する新規則を発表した。国土安全保障省は、米国民の雇用を確保するためと説明した。新規則は官報による公告から60日後に発効するという。米紙ニューヨーク・タイムズによると、賃金水準や必要な専門性など新規則の詳細は週内にも公表される見通しという。
トランプ大統領は6月に、H1Bビザを含む一部の就労ビザ発給を今年末まで一時的に凍結する大統領令に署名していた。大統領令が今年末までの時限措置に対して、新規則は恒久的な効力を持つ。
またニューヨーク・タイムズによると、米カリフォルニア州北部地区の連邦地裁は1日、同大統領令の執行一時差し止め命令を下したという。
H1Bビザは「ハイテクビザ」とも呼ばれ、IT企業が外国人技術者の確保に活用してきた。H1Bの現在の年間発給上限は8万5千件。米政権は今回の措置により、H1Bビザの法定上の発給上限自体は変わらないとしている。ただ米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)によると、発給要件の厳格化により、H1Bビザ申請のうち約3分の1が却下される見込みという。
H1Bビザはインドや中国出身の技術者による取得が多い。米市民権・移民局の2018会計年度の資料(申請ベース)ではインド人が全体の73.9%を占め首位、中国が11.2%と続く。トランプ氏は米大統領選を前に支持層に米国人の雇用確保を訴える狙いがある。
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