線状降水帯予測、10年計画で挑む 気象庁、困難克服なるか

社会・くらし
2020/10/6 22:18 (2020/10/7 0:40更新)
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各地で豪雨災害が相次ぐなか、主な原因の一つとなる「線状降水帯」の予測に気象庁が挑んでいる。局地的に雨雲が発達するため動きをつかみにくい。同庁は10年後を目標に半日前の段階で線状降水帯の発生や雨量の予測を目指すが、データ、計算速度、計算式の3つの課題が立ちはだかる。

■7月豪雨でも発生 1級河川の球磨川が氾濫するなど、九州を中心に甚大な被害が出た7月の豪雨。気象庁は熊本県が記録的大雨に見舞われた前日に県内の24時間降水量を多いところで200ミリと予想したが、実際には複数地点で400ミリ以上の雨が降った。

「予測が難しい線状降水帯が夜間に発生した。我々の実力不足だ」。気象庁の関田康雄長官は同月の定例記者会見で悔しさをにじませ、予測精度向上を急ぐ考えを示した。

線状降水帯は積乱雲が同じ場所で次々と発達し、線状に連なる現象。長時間にわたり強い雨が降り、2018年の西日本豪雨や17年の九州北部豪雨など、過去にも豪雨災害をもたらしてきた。気象庁の分析によると、7月の豪雨では停滞する梅雨前線に向かって多量の水蒸気を含んだ大気が大量に流れ込み、7月3~8日に九州で計9個の線状降水帯が発生した。

■半日前までの予測目標 相次ぐ豪雨災害を受け、気象庁は住民の避難が可能な半日前までに線状降水帯による災害発生の危険度を正確に予測できるよう、観測・分析技術の向上に取り組んでいる。30年までの実現を目標にするが、課題も多い。

まずは観測網の充実だ。積乱雲の発生を予測するには、大気中に含まれる水蒸気量を正確に把握する必要がある。しかし、線状降水帯の発生頻度が高い九州の西側には東シナ海が広がっており「積乱雲のもととなる水蒸気の流れや量の把握が重要だが、陸地に比べて観測データが少ない」(同庁数値予報課)。

予測に使うスーパーコンピューターの性能も十分ではない。気象庁は18年にスパコンを更新し、計算能力はそれまでの約10倍に上がったが、半日先の天候は5キロ四方の網目単位でしか予測できない。線状降水帯は長さ50~300キロ、幅20~50キロ程度とされ、同庁の担当者は「もっと性能が上がらなければ、精緻な予測は難しい」と話す。

そもそも線状降水帯の発生や収束に関する詳細なメカニズムはいまだ解明されていない。予測精度を高めるには、スパコンの性能に加え、予測に用いる計算式自体に改良の余地があるという。

■最新の研究成果活用 気象庁は「最新の科学的知見を取り入れながら徐々に精度を上げていく」としている。今後、観測船を使って東シナ海での洋上観測を強化し、全国に設置されているアメダス(地域気象観測システム)への湿度計導入を順次進める。

他機関でも研究が進む。防災科学技術研究所などは19年度から早期予測に向けた実証実験を行う。7月の豪雨の際、線状降水帯の発生可能性を実験に参加する熊本、鹿児島両市に事前に伝えるなど、一定の成果が見えてきている。

研究グループが現在、特に力を入れるのが2時間前の発生予測だ。半日前の予測に比べ、避難などの防災対応に充てられる時間は短くなるが、予測精度は高めやすい。責任者を務める防災科研の清水慎吾主任研究員は「まだ空振りが多い」としつつ「限られた時間で予測情報を有効に活用する方法についても、今後考えていく必要がある」と話している。

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