住まいの確保を民間支援 初期費用を支給、感染防ぐ

住まいがない人や、新型コロナウイルスの影響で居場所を失った人に、入居時の初期費用を支給する民間プロジェクトが始まっている。困窮者向けの宿泊施設は集団生活が多く、感染リスクがあるためだ。自分名義で家を借りることで、生活再建の第一歩にしてもらう狙いもある。
プロジェクトはホームレス支援団体「ビッグイシュー基金」(大阪市)を中心に、東京や大阪で生活困窮者を支援する約20の民間団体が連携し、8月にスタートした。200世帯を対象に、住宅賃貸契約の初期費用など最大30万円を支給する。
コロナ禍で住まいを失う人がいることを問題視した日本コカ・コーラがビッグイシュー側に呼び掛けたことがきっかけになった。米コカ・コーラ財団が50万ドル(約5千万円)を寄付し、実施にこぎつけた。
大阪府高槻市で9月からアパートを借りている山田裕三さんは、敷金・礼金などの初期費用24万円と、洗濯機や電子レンジなどの購入費6万円をプロジェクトの支援金で賄った。一時的でない住まいを持つのは数年ぶりだ。
料理人として働いていたが、7~8年前に母親の介護のため離職。現在は雑誌「ビッグイシュー」の路上販売で生計を立てる。月4万円の家賃は重荷だ。それでも落ち着いて眠れる自宅は格別で、生活に張りも出た。「背負うものが多くなって社会性が増えた」と話す。少しばかりの貯蓄はあるが、この部屋で年越しそばを食べるためアルバイト先も探すつもりだ。
コロナ禍の景気悪化で人々が住まいや居場所を失う恐れは高まる。NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京)には「派遣契約が更新されず社員寮にいられなくなった」「住宅ローンが払えない」といった相談が寄せられる。
プロジェクトの利用はまだ少ない。ビッグイシュー基金の高野太一事務局長は「行政機関が困窮者に紹介する無料・低額宿泊所は集団生活が多く、感染の危険が高い。個室の確保が重要だ」と強調。「比較的安く入居できる公営住宅など、公的な住居支援制度を充実させるべきだ」と行政の取り組みを求めている。〔共同〕

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