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東京大会目指すアスリート、コロナ下でも強化着々

東京五輪・パラリンピックをめざすアスリートたちが、少しずつ練習や試合といった「日常」を取り戻しつつある。ただ、海外渡航制限や感染リスクはなお立ちはだかり、コロナ前と全く同じとはいかない。そんな中でも最新鋭の施設や工夫を凝らした取り組みで、強化の歩みを止めないよう奮闘している。

低酸素プール、高地トレ代わり

低酸素状態でトレーニングを行う競泳の中村克(9月30日、東京都江東区)

豊洲市場のすぐそば、新交通ゆりかもめが目の前を走るビルの中に、東京大会出場を目指す選手が集うトレーニング施設がある。「アシックス スポーツコンプレックス 東京ベイ」と呼ばれるこの場所は、室内の酸素濃度の調整が可能な2種類のプールを備え、50メートルプールは「標高約2000メートル」に設定。都心にいながら「仮想高地トレーニング」を実戦できる施設だ。

開設は昨年11月。運営するアシックス・スポーツコンプレックスの松田卓巳社長は「東京大会を迎えるにあたって、物づくりだけでなく、コンテンツも一つの事業にしたかった」と話す。施設内にはプールだけでなく、ウエートトレーニング用の部屋やスタジオも併設。いずれも酸素濃度の調整機能を備え、低酸素にすることで短時間でのトレーニング効果が見込める。

低酸素状態でトレーニングができるプールに設置されたモニター。上部は標高、下部は酸素濃度を示している(9月30日、東京都江東区)

大きな期待を寄せるのが競泳代表陣だ。トップスイマーの多くは心肺機能を高め持久力をつけるため、主要大会の前には米国アリゾナ州やスペインなどで長期の高地合宿を行うのが恒例だった。だが、コロナ禍で海外合宿が難しくなり、低酸素トレーニングの効果を期待して同施設を練習する選手が増えている。

男子100メートル自由形日本記録保持者の中村克(イトマン東進)は6月から毎週このプールで泳ぐ。「過酷な環境なので良い練習をつめたら自信がつく。もう高地合宿に行かなくていいかな」と満足げだ。他にもパラリンピック2大会メダルの木村敬一(東京ガス)など、オリパラ含め競泳選手約50人が利用している。

海外での高地トレーニングと違い、「トレーニング以外は平地で過ごせるので疲労の回復が早い。練習にバリエーションを持たせられる」と早大水泳部の奥野景介コーチ。コロナ禍で強化計画の変更を余儀なくされる中、低酸素プールがスイマーたちの救世主となるかもしれない。

(堀部遥)

テーブルボッチャで戦術磨く

パソコンを使ってテーブルボッチャの映像を選手たちにリモート配信した=日本ボッチャ協会提供

脳性まひなど障害の重い選手がプレーするパラリンピック競技のボッチャ。新型コロナ感染で重症化するリスクが高いため、本格的な強化合宿は今月になってようやく再開したばかりだ。ただ、この間もただ手をこまぬいていたわけではない。「テーブルボッチャ」なるものを使い、リモート合宿に励んできた。

通常のボッチャの3分の2ほどのミニボールを、ランプと呼ばれる木製のスロープから転がし、テーブルの上につくった約1メートル四方のコートで行う。パラリンピックで使われる床材を敷いたコートは村上光輝・日本代表監督の自宅などに設置。選手はビデオ会議システムを通じ、リモートで監督に投げる指示を出した。

普通、ランプを使うのはBC3クラスの選手だけで、他のクラスはボールを手で投げる。また、選手が実際にボールを扱うわけではないので、どれほどの練習になるのかと思いきや、「発見があってすごくいい」とは村上監督。

まず、普段クラスごとに分かれて練習する選手が一堂に会するので、球の配置に関する戦術の共有が進んだ。杉村英孝(伊豆介護センター)は「どう攻めようかとか、選手同士の掛け合いが自然と出てきた」と、活性化したコミュニケーションに手応えを感じる。団体戦もあるので、共通理解を深めることは重要だ。

会議用システムで選手たちをつなぎ、戦術を練る=日本ボッチャ協会提供

映像を見ながらの投球は精度を欠いてミスが多くなりがちだが、そこも逆手に取り、修正力の鍛錬になると考えた。村上監督は「今まではミスで黙りこくっていた選手が、そこから立ち直る力をすごく伸ばしている」と目を細める。

徐々に通常のコートでの練習も増えてきたものの、今でもリモートでミーティングを開いた後などに、選手の要望で頻繁にテーブルボッチャをするといい、「今後も続ける」と村上監督。「ウィズコロナ」時代の強化策として定着していきそうだ。

(摂待卓)

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