EU外交弱点あらわ 全会一致原則、見直し求める声も

ヨーロッパ
2020/10/2 22:26
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EU首脳会議ではトルコやベラルーシ問題を中心に討議した(1日、ブリュッセル)=AP

EU首脳会議ではトルコやベラルーシ問題を中心に討議した(1日、ブリュッセル)=AP

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)が2日、ベラルーシへの制裁でようやく合意した。キプロス一国が反対を続けてきたが、首脳同士が膝詰めで協議し、全会一致に持ち込んだ。もともと9月中旬までの制裁発動を見込んでいた。意思決定の遅れはEUの外交・安全保障政策の課題を浮き彫りにした。

「我々は8月、対ベラルーシで共通の立場を確認した。速やかに(制裁を)実行に移す」。EUのミシェル大統領は2日未明の記者会見で力を込めた。EUは1~2日の首脳会議で、資産凍結や域内への移動禁止といった制裁の対象となるリストに政府高官ら約40人を加えることで合意した。

英国やカナダが相次いでベラルーシへの制裁を決めるなか、EUの動きの鈍さは際立った。EUの外交・安全保障政策は全会一致が原則だ。待ったをかけていたのが地中海の島国、キプロスだ。制裁合意の条件として、東地中海で緊張の高まるトルコへの強硬な措置をEUに求めていた。

トルコは2019年にキプロス島周辺の海域でガス田の探査を始め、20年8月にギリシャ領沖でも着手した。反発したギリシャやキプロスはフランスなどを後ろ盾にし、同海域で軍事演習をするなど対立は深まった。ミシェル氏やEU議長国のドイツが間に入り、トルコとギリシャは対話を始めた。1日、北大西洋条約機構(NATO)本部で会談した両国は軍事衝突を避けるためのホットライン創設で合意した。

トルコとキプロスの対話が進まないのには複雑な事情がある。キプロスは事実上南北に分断された国家で、トルコだけが北キプロスを国家承認する。トルコは探査するガス田は自国の大陸棚や北キプロスの権益と主張する。危機感を高めたキプロスはベラルーシ制裁を阻止する強硬策に出た。

ベラルーシと異なり、対トルコでEUは割れている。とりわけ、フランスは内戦状態のリビアなどを巡ってトルコとの関係が悪化し、強硬路線を唱える。東欧やドイツは、中東などからトルコを経由した難民流入の恐れがあるとして関係悪化を避けたい立場だ。

結局、EUは首脳会議でトルコに対し「一方的な行動をやめなければすべての手段を使う」と制裁をちらつかせてキプロスなどに配慮した。歩み寄りがみられれば、経済協力などを深める「アメとムチ」戦略をとった。

EUの外交関連の意思決定の遅さはかねて指摘されるが、最近ではベラルーシへの制裁をはじめ、全会一致という制度の壁に阻まれている。例えば中国だ。香港やウイグルでは人権や民主主義がないがしろにされているにもかかわらず、強力な制裁に踏み込む米国とは一線を画している。

ロシアで起きた反体制派指導者ナワリヌイ氏の毒殺未遂疑惑でも同様だ。人権などはEUが最も重視する基本的な価値観だ。フォンデアライエン欧州委員長は9月半ば、「簡単な声明でさえ、出すのが遅れる」と嘆いた。意思決定の全会一致を改め、EU独自の多数決方式への変更を模索する動きもある。ただ全会一致は「EU全加盟国が団結している象徴」(ミシェル氏)でもあり、実現は容易ではない。

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