夫の転勤 在宅で就業継続 楓工務店
はたらく

建設業界で働く女性が増えてきた。注文住宅などを手掛ける楓工務店(奈良市)は、女性社員が結婚や出産などライフイベントに左右されず、長く働き続けられる環境づくりを進めている。夫の転勤で本社勤務が難しくなった社員がテレワークで就業継続できる応援制度を2年前に導入した。
設計監理部の主任を務める出原祐子さん(29)は2018年10月、夫の転勤で富山市に引っ越した。月に1回程度、奈良市の本社に出社する以外は富山の自宅からテレワークで仕事をこなす。インテリアの責任者として建築図面などのチェックが主な仕事だ。
「留意しているのは仕事の手順を曖昧にせずに、業務の流れを自分以外のメンバーに見える化すること」と出原さん。こまかな業務シートを作成し、全員が共有する。勤務中は同僚と常に連絡が取れるように、ビデオ会議システムを常にログインにしている。連絡手段として電話やチャットも使うが、オンラインで建築図面を共有しながら不明点を確認することもある。

同社にとってテレワークの導入は初めてのことだった。そこで転居前の1カ月間、試行期間として社内の別の部屋に席を移し、同僚とテレビ会議システムをつないだまま疑似テレワークを体験。様々な角度から課題を洗いだし、マニュアルにまとめた。これは新型コロナウイルス禍で生かされ、一時、社員67人の3分の2が違和感なくテレワークに移行できたという。
コンシェルジュ部の門林由利さん(28)も昨年11月、夫の転勤で移り住んだ京都府京丹後市からテレワークを始めた。管理職として営業スタッフの顧客対応の指導も担い、遠方の顧客とオンラインで打ち合わせをする際には参加もする。「地方では希望する仕事を見つけるのは簡単ではない。こうした環境で仕事を続けることができるのはありがたい」と話す。
同社は14年4月から新卒採用を始め、出原さんも門林さんも新卒採用の1期生だ。社員の平均年齢は29歳と若く、男女比も1対1と多くの女性が働く。田尻忠義社長は「1期生として彼女たちは会社の財産。数年後には奈良に戻ってくることもわかっており、できることなら働き続けてほしかった」と話す。育児との両立を目指す女性社員には時短勤務も導入し、今後も「けんせつ小町」を支援していく考えだ。
(岡本憲明)