自動車教習、指導員はAI 福岡の教習所などが開発
自動車教習所を運営するミナミホールディングス(HD、福岡県大野城市)などは、自動運転に使用される人工知能(AI)を使った運転教習の開発を進めている。車に取り付けたセンサーで教習所内での走行位置や車両の状態を検知し、それをAIが解析して指導する。まずはペーパードライバー講習など免許を持っている人を対象に来春にも実施し、指導員不足を補う。

自動運転システム開発のティアフォー(東京・品川)などと連携し、センサーとAIを組み合わせた教習システムを開発する。車の屋根に設置したセンサーがレーザー光を常に周囲に照射し、近くの建物などまでの距離を計測。事前に読み込んだ教習コースの地図と照らし合わせ、数センチ単位で車両の位置や動きを特定する仕組みだ。発車する際などに必要な周囲の安全確認は、ダッシュボードに取り付けた車内カメラで運転者の顔などの動きを捉える。AIはこうした動きを解析し、音声でリアルタイムで指導ができるようにする。
教習後は、AIが運転スキルを5段階で評価する。ティアフォーによると、指導員とAIによる評価の一致率は現状で平均83%。開発エンジニアの村木友哉さんは「今後、9割近くまで一致させる」と話す。
ミナミHDはAIによる教習を確立することで、指導員不足の解消を狙う。若者の車離れが指摘されるが、全日本指定自動車教習所協会連合会(東京・千代田)によると、2033年には指導員が最大35%不足するという。

現在でも多くの学生が教習を受ける冬から春にかけての繁忙期は「指導員が足りず、入学希望者を断る学校も多い」(ミナミHDの江上喜朗社長)。同社はAI教習が普及すれば人手不足の解消につながると期待する。ただ安全を優先し、AI教習はまずはペーパードライバーら免許を取得している人を対象にする考えだ。
今後は自動運転技術なども活用し、事故を防ぐため自動でブレーキをかけられるようにする。また現行では仮運転免許を持つ人が路上で練習する場合、一種免許の取得期間が通算3年以上などの資格を持つ指導者の同乗が義務付けられている。これをAIが代わってできるよう法令改正なども働きかけていく。
開発費用は現時点で、数千万円程度という。ミナミHDは自社での利用とともに、他の教習所への販売も視野に入れている。(荒木望)