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サッカー日本の使命感 次の2試合で何を見るべきか

サッカージャーナリスト 大住良之

10月のアフリカ勢との親善試合では久保(左)が最大の注目となる=共同

実質的に11カ月ぶりとなる活動。森保一監督率いるサッカーの日本代表は、10月9日にカメルーンと、そして13日にコートジボワールと親善試合を行う。場所はいずれもオランダのユトレヒト。無観客での開催となる。そのメンバーが、1日に発表された。

25人はすべて欧州のクラブ所属の選手である。ドイツが6人、ベルギーが5人、フランス、オランダ、スペインがそれぞれ3人、ポルトガルとイタリアが2人、そしてイングランドが1人。Jリーグからは呼ぶことができなかった。リーグ日程が過密になっているうえに、日本政府による帰国後2週間の「自主待機」措置が解除されなかったため、招集が見送られたのだ。

欧州のなかでも、ロシアとセルビアの両国からの招集は、オランダ入国に際し制限措置が継続しているため断念した。そのため、橋本拳人(ロストフ=ロシア)と浅野拓磨(パルチザン=セルビア)は、今回のメンバーに入っていない。

「欧州組だけ」でフルメンバーに近く

とはいっても、日本サッカー史上初の「欧州組だけの日本代表」は、「フルメンバー」に近い。およそ1年ぶりだが、主力が欠けているわけではなく、ほぼこのメンバーで2年前から20試合以上を戦っているので、初戦までの4日間のトレーニングのなかで感覚は十分戻るだろう。

さらに、初招集の菅原由勢(AZアルクマール=オランダ)をはじめ、7人の「東京オリンピック世代(1997年以降の生まれ)」も含まれている。オリンピック代表強化の機会がないなか、A代表と同じ森保監督の下で活動することで選手の成長を促す狙いだ。

見どころはたくさんあるが、最大の注目はやはりスペインで注目を集める久保建英(ビリャレアル)だろう。このチームの攻撃面の「顔」のひとりだった中島翔哉(ポルト=ポルトガル)を招集しなかった今回、前線のポジションがひとつ空いており、この1年ですっかりたくましさを増した久保が出場するチャンスは大きい。

「華麗」な印象のある日本代表の攻撃陣のなかで岡崎が異彩を放つか=共同

森保監督が就任して以来、若手中心で数人のベテランを加えて出場した昨年の南米選手権(ブラジル)以外は招集がなかったワールドカップ3大会出場の岡崎慎司(ウエスカ=スペイン)の招集も興味深い。34歳になったが、スペインの1部でも存在感を見せているだけに、「華麗」な印象のある攻撃陣のなかで異彩を放つかもしれない。

だが、今回の2試合は、これまでの日本代表活動とはまったく違う意味をもつ。

「日本代表の活動が、日本の国民の皆さんにとって必要なものでなくてはならない」。メンバー発表の記者会見で、森保監督はこんな話をした。

森保監督は、これまでも「最後まで全力を尽くし、チーム一丸となって勝利を目指すことで、見る人に勇気や元気を感じてもらいたい」というような話をしてきたが、今回は一歩踏み込んだ感がある。

日本代表の発表を受け、オンラインで記者会見する森保監督(1日)=共同

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、3月から予定されていた代表ゲームはすべて中止になった。Jリーグは再開されて「サッカーのある生活」はその一部が戻ったが、「代表チームのない生活」はまだ続いている。「代表のサッカーがこのままなくなるか、あっても、人びとの関心を引かないものになってしまうのではないか」。大げさにいえば、この数カ月間、そんな思いが森保監督の心を去来していたのではないだろうか。

人々が喜びと生きる力を感じる試合に

その関心を取り戻し、人々が日本代表の試合を心待ちにし、その戦いぶりを見て大きな喜びと生きる力を感じるような試合をしなければならない。森保監督の使命感は、勝つか負けるか、いい試合をするかどうかなど、通常のサッカーの監督の領域をはるかに超えたものになっている。そして選手たちがその使命感に共感し、百パーセント賛同してその思いをピッチ上で表現しようとしたなら、今回の活動は歴史に残るものになる可能性がある。

だがサッカーは非常にもどかしいスポーツでもある。いくらがんばっても、その都度相手が立ちふさがり、じゃまをする。一生懸命にやっても、見ている者にはまるで間抜けのように見えてしまうことさえある。サッカーは「がんばり」をストレートに表現できない競技なのである。

「元気と、勇気と、そして根気を見せたい」とも、森保監督は語った。すべてがうまく回って得点が生まれ、守備面でも奮闘して勝利を収められればいうことはない。しかし相手はアフリカきっての強豪であり、全選手が欧州で豊富な経験を積んでいる。かみ合わないうちに失点し、いいところなく敗れる恐れも十分ある。

私が見たいのは、こうしたときだ。うまく運ばない時間帯にもチーム全員で根気強く耐え、チーム内で修正することでいい方向にもっていこうという努力を続けること――。それは表面的にはわかりにくいかもしれないが、そうした選手たちの態度こそ、この2試合で見るべき最大のポイントのように思う。

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