ひろぎんHD発足 部谷社長「業務軸拡大で地域に貢献」

広島銀行を中核とする持ち株会社、ひろぎんホールディングス(HD)が1日発足した。子会社はまず銀行本体や証券会社など5社で始動し、2021年にはコンサルティング会社などを含め8社体制を目指す。足元では新型コロナウイルスの影響で地場企業は苦しい経営を迫られている。新体制への移行が、顧客向けの踏み込んだ事業支援にどうつながるか注目される。

同日、ひろぎんHD発足のセレモニーが広島銀行の仮本店(広島市)で開かれた。部谷俊雄社長は「銀行業にとどまらず業務軸を拡大し、地域総合サービスグループを目指す」と意気込みを語った。新しく掲げたブランドスローガンは「未来を、ひろげる」。グループで一丸となって顧客や地域の可能性を広げるという思いを込めた。
新体制はひろぎんHDの下に子会社として広島銀やひろぎん証券、しまなみ債権回収など5社が入る形で始動。21年1月ごろには顧客向けにIT(情報技術)ツールの導入支援を手掛ける「ひろぎんITソリューションズ」を設立し、傘下に入れる見通し。コンサル会社なども立ち上げ、21年中に子会社は計8社になる見込みだ。
持ち株会社体制への移行には、取引先企業のニーズが多様化していることが背景にある。融資を中心とするこれまでの銀行業務だけでは、顧客の複雑な課題に応えきれない。コンサルやIT支援、ファンドを通じた事業再生といった選択肢をより多く取りそろえることで、「企業の成長に貢献できる」(部谷社長)。
地ならしはこれまでにも進めてきた。4月に立ち上げた投資ファンドの専門会社、ひろぎんキャピタルパートナーズ(広島市)は7月にコロナ対応ファンドを組成。宮島の旅館「岩惣」を運営する伊都岐観光(広島県廿日市市)に1億円を出資し、経営支援に乗り出している。
実際に人を送り込み、「取引先企業」と「銀行員」というこれまでの関係性を超えた伴走支援に着手している。ひろぎんキャピタルの小池政弘社長は「事業再生のノウハウを銀行本体、グループ各社にも浸透させる」と意気込む。
課題は社員の意識改革だ。全社員のうち9割が銀行本体に所属しており、これまでの銀行第一主義の発想を変えなければ新体制に移行した意味は薄れる。部谷社長は「行員がグループ各社の機能を理解し、活用できるようにする」と話した。グループ一体で顧客との接点をさらに広げる。
ひろぎんHDは1日、東京証券取引所第1部に上場したが、東証のシステム障害で全銘柄の売買が停止されたことで初値がつかなかった。同社では「初日だっただけに残念」との声が聞かれた。