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住宅ローン減税「1%控除」の妥当性

経済部 辻隆史

住宅ローン減税をめぐる政府内の見直し議論が水面下で活発になっている。政府・与党は2021年度の税制改正で13年間の控除を認める特例の延長を議論する方向だが、隠れた重要な論点もある。低金利の中で控除率の「1%」は妥当なのか。会計検査院が問題視しており、今年以降の税制改正論議で焦点になる可能性もある。

「国民の納得できる必要最小限のものになっているか検証が望まれる」。2019年11月、検査院は決算検査報告で、住宅ローン減税についてそう指摘した。

住宅ローン減税は年末の借入残高の1%が所得税から控除される仕組みだ。控除額は最大で年40万円、期間は10年間。認定長期優良住宅などは年50万円に拡充される優遇措置もある。

検査院が提起したのは「1%」の妥当性だ。検査院は独自に税務署に赴き、住宅ローンの現状を調査した。17年に控除の適用を開始した人のうち、1%を下回る借入金利で住宅ローンを借り入れている人の割合が約8割に上ったのだ。

借入金利が控除率の1%を下回る場合、毎年の住宅ローン控除額が、ローンの支払利息額を上回ることになると「逆ざや」も期待できてしまう。検査院は政府に「本来はローンを組む必要がない人が組んだり、控除期間が終了するまで繰り上げ返済をしなかったりする動機づけになる」と指摘した。

例えば、手元に潤沢な資金がある人や、親族の援助を見込める人など、本来ならローンに頼らず住宅を買える人たちが「逆ざや」目当てでローンを借りるケースも出るというわけだ。

大企業の社員や公務員など収入が安定した立場の人ほど、低い優遇金利を活用しやすくなる面もある。1%の控除率との開きが大きくなり、受けられる恩恵も拡大する。

検査院の指摘を踏まえ、財務省は控除率の見直しに着手したい考えだ。財務省幹部は「例えば支払った金利分を控除する仕組みも一案だ」と語る。低金利時代にあった適切な控除水準に引き下げるべきだとの意見は同省内の総意となっている。

仮に控除率を「1%以下」に見直したとしても、すでに適用を受けている人は対象にはならない見通し。「1%控除」を前提に住宅を購入し、人生の長期計画を立てている人は多く、反発を招きかねないためだ。

今の住宅ローン減税制度は21年末に期限を迎える。財務省は今冬の政府・与党の議論の俎上(そじょう)に上げたい考えだが、新型コロナウイルスの流行を受け利用者の負担増につながる話には与党内の反対論が強い。財務省は提起する時期を慎重に見極める。

戸建て住宅やマンションを購入する際、当然視しがちな「1%」も不変ではないと考えて検討すべきかもしれない。

(辻隆史)

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