視線合わさず論戦90分 米大統領選討論会

トランプ政権
米大統領選
2020/9/30 20:45 (2020/10/1 6:28更新)
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米共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領の初対決となった29日のテレビ討論会。2人はほとんど視線を合わすことなく、約90分にわたって激論を交わした。新型コロナウイルス対策や経済再生などを巡る両者の主張は真っ向から対立した。

■コロナ トランプ氏「中国の責任」 バイデン氏「無計画」

「あなたは何もしなかった。今も無計画だ」。バイデン氏はトランプ氏の新型コロナウイルス対策をこき下ろした。米国は感染者が700万人で、死者は20万人を超え世界最多だ。米国の人口は世界の4%超なのに死者数は同20%を占めるとのデータも出し「パニックに陥っていた」と政権の対応の不備を追及した。

政権のコロナ対応は不支持が支持を上回るという世論調査が相次ぐ。バイデン氏はトランプ政権最大の失策として国民の不満をすくい取ることを狙った。

トランプ氏は「我々はうまくやった。あなたの言うことを聞いていたら20万人ではなく、数百万人が死んでいただろう」と反論した。バイデン氏は検査・追跡能力の拡大やマスク着用の義務化など厳しいウイルス対策を公約に掲げる。トランプ氏は最終的に「中国のせいだ」と矛先を変えた。

トランプ氏が反転攻勢を試みたのがワクチンだ。「(供給まで)あと数週間だ」と断言し、投票日前の承認を示唆した。政権は開発・生産を支援し、米ファイザーなど4つの候補が早くも臨床試験(治験)の最終段階に入った。バイデン氏は審査当局に政治的な圧力がかかるとみており「全く信用しない。信用するのは科学者だ」と安全性に疑問を呈した。

トランプ氏は経済活動の正常化でも反論した。「専門家が言うなら(経済を)閉鎖する」と述べたバイデン氏の過去の発言を念頭に「バイデン氏は閉鎖したがっている」と攻撃した。トランプ氏はコロナのリスク評価が進んできたとして一律の再封鎖に反対を唱えた。バイデン氏は「人々は安全を求めている」と語気を強めたが、経済を再建しながらウイルスを収束させる「出口」の詳細は示さなかった。

(ワシントン=鳳山太成)

第1回テレビ討論会で討論するトランプ米大統領(29日、米オハイオ州)=AP

第1回テレビ討論会で討論するトランプ米大統領(29日、米オハイオ州)=AP

経済再生 トランプ氏「雇用急回復」 バイデン氏「企業は増税」

「すでに1000万人が職場に戻った。過去に例のない雇用回復だ」。トランプ氏は経済再開で景気がV字回復を遂げると強調した。失業率は4月の14%台から8%台まで下がり、失業者もピークの2310万人から1360万人まで減った。それでも失業率は危機前の3%台には遠く、雇用再生が最大の争点だ。

バイデン氏は「うまくやっているのは億万長者だけだ」とトランプ氏に強く反論した。米連邦準備理事会(FRB)の調査では、3月に年収4万ドル以下の家計は4割が職を失い、雇用危機は低所得層に集中する。

株式市場はいち早く回復したが、米家計が保有する株式と投資信託の9割弱は上位10%の高所得層が独占する。バイデン氏は「コロナ危機は富裕層と低所得層の経済格差を一段と広げた」と批判する。

バイデン氏は米国製品を連邦政府が買い入れる「バイ・アメリカン」や再生エネルギーなどへの投資で「700万人の雇用を生み出す」と主張した。

ただ、同氏の経済再生プランは10年間で3兆ドルを超す大増税を伴う。トランプ氏は「彼は社会主義者だ」とのレッテルを貼り、「バイデン氏が大統領になれば、経済恐慌に突入する。米国に進出した企業の半数が去っていくだろう」と有権者の不安を強くあおってみせた。

トランプ氏自身は1期目に同1.5兆ドルの大減税を打ち出し、2期目も年1兆ドルもの税収がある「給与税」の減免などを公約する。それでもトランプ氏は討論会で減税プランをアピールできなかった。所得税をほとんど払っていないと報じられたためで、同氏の納税問題は「大型減税で大企業と富裕層だけが潤っている」という格差批判に火をつけた。

バイデン氏は「大手企業500社のうち、91社は法人税を全く負担していない」と、米税制経済研究所の試算を引用して指摘した。「連邦法人税率は21%から28%に引き上げる」と、企業や富裕層への増税を再び強調した。

「トランプ氏の貿易交渉は不発だ。対中赤字は一段と増えている」。バイデン氏はトランプ氏の関税政策も強く批判した。

ただ、実際には19年の対中貿易赤字は前年比17.6%も減った。むしろオバマ政権下での8年間で対中赤字は30%近くも増加し、有権者に反・自由貿易の機運を植え付けるきっかけとなった。

米中の経済摩擦は、単純な貿易不均衡からハイテク分野の覇権争いにまで発展している。中国が経済規模だけでなく技術力でも米国を急激に追い上げているためだが、両氏の29日の討論はそうした米中対立の本質論は素通りして終わった。

(ワシントン=河浪武史)

第1回テレビ討論会で発言する民主党候補のバイデン前米副大統領(29日、米オハイオ州)=AP

第1回テレビ討論会で発言する民主党候補のバイデン前米副大統領(29日、米オハイオ州)=AP

■大統領の資質 トランプ氏、納税問題が火種に

双方の中傷合戦は大統領としての資質を巡るやり取りで際立った。

「私は何百万ドルもの所得税を払っている」。トランプ氏の2016、17年の所得税の支払額が750ドルずつだったとの報道の真偽を問われた同氏がこうはぐらかすと、討論会前に納税申告書を公表したバイデン氏は「申告書を公開しろ」と要求した。

バイデン氏は不動産王のトランプ氏が納税額を減らせるのは「税制をうまく利用しているためだ」と指摘し、トランプ減税の廃止を提唱した。さらに「あなたは米国史上最悪の大統領だ」とたたみかけた。トランプ氏は「そっちは上院議員だったじゃないか。なのに、47年間何もやってこなかった」と酷評した。

トランプ氏が攻勢をかけたのはバイデン氏の次男ハンター氏の疑惑だ。

同氏がウクライナ企業から月5万ドル(約520万円)の報酬を得ていたとされる件を持ち出し「あなたが副大統領になったとたん、彼はウクライナや中国で富を築いた」と追及した。バイデン氏は興奮気味に「真実ではない」と防戦に追われた。

トランプ氏は郵便投票は不正の温床だと批判し、選挙結果を認めない構えをみせる。「何万票もの不正があれば、(結果は)受け入れられない」とトランプ氏は主張した。(ワシントン=永沢毅)

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