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アゼルバイジャンで民族紛争拡大、背後にロシアとトルコ

(更新)

【モスクワ=石川陽平】旧ソ連アゼルバイジャンの民族紛争が拡大している。アルメニア系住民が多数派のナゴルノカラバフを巡り政府軍とアルメニア側が29日も激しい戦闘を続け、1994年の停戦後、最大の衝突となった。軍備増強を進めたアゼルバイジャンが「占領地」奪回を急ぐ構図で、停戦のカギはロシアとトルコが握っている。

戦闘に参加するアゼルバイジャン軍の兵士(ナゴルノカラバフ地域)=アゼルバイジャン国防省・AP

27日朝に始まった戦闘で、アルメニア軍と行動をともにするナゴルノカラバフの軍事当局は29日未明までに、死亡した軍人84人の名前を公表した。アゼルバイジャン軍にも多数の死傷者が出ているとみられ、アリエフ大統領は29日、10人の民間人も死亡したと明らかにした。

激しい戦闘はナゴルノカラバフの東部境界線付近で続いている。アゼルバイジャン軍は多数の戦車やドローンなど最新兵器を投入し、攻勢に出ているもようだ。

アルメニア外務省は29日、アゼルバイジャン軍がアルメニア本土へも攻撃を広げていると批判した。アルメニアも射程の長い砲撃を加える可能性を示し、戦闘地域が広がる恐れが出ている。

ナゴルノカラバフは様々な民族が暮らすカフカス地域の山岳地帯にあり、長く民族対立の火種だった。ソ連末期の1988年、アゼルバイジャンからアルメニアへの帰属替えを求める運動が高まり、大規模な衝突に発展した。91年にはアルメニア系住民が一方的に「共和国」樹立を宣言した。94年の停戦成立後も衝突が絶えなかった。

ナゴルノカラバフは、アルメニアが事実上、保護領にしてきた。今回の紛争再燃でも、同国軍がナゴルノカラバフの部隊とともに、アゼルバイジャン軍と交戦している。アゼルバイジャンによると、ナゴルノカラバフ周辺も含めて国土の約20%がアルメニア側に「占領」されてきた。

紛争再燃の背景には、アゼルバイジャンが近年、石油や天然ガスの輸出で国力を増し、軍備を増強してきたことがある。トルコなどから最新兵器を購入し、アルメニア側との軍事バランスに変化が見えていた。アリエフ大統領は27日、「紛争の解決は歴史的な課題だ」と述べ、占領地の奪回を国民に訴えた。

紛争を複雑にしているのが、地域大国のロシアとトルコの関与だ。トルコは民族的に近いアゼルバイジャンを支持し、ロシアは軍事同盟を結ぶアルメニアに軍事基地を置く。トルコとアゼルバイジャンがイスラム教で、ロシアとアルメニアがキリスト教という宗教的違いや、トルコとアルメニアの歴史的対立も紛争に影を落とす。

トルコは今回、アゼルバイジャンへの支持を強めている。エルドアン大統領は28日、「ナゴルノカラバフの占領で始まった危機を終わらせる時が来た」と表明した。アルメニアは28日、トルコがドローンなどトルコ製武器の利用を支援する軍事専門家を送り、中東から雇い兵を送っていると非難した。

一方、ロシアはアゼルバイジャンとアルメニア双方との関係維持を重視し「中立」を保つ。米欧などと連携し、双方に即時停戦を呼びかけている。ロシアがアルメニアに置く軍事基地が紛争再燃を抑制する役割をある程度、果たしてきた。ただ戦闘がさらに激化すれば、アルメニア支援に動く可能性も否定できない。

欧米は産油国アゼルバイジャンの輸出用の石油パイプラインやほぼ同じルートを通る天然ガスのパイプラインが被害を受け、資源価格に影響を与えることも懸念する。ただ、敷設ルートは紛争地帯から30~40キロメートル離れており、アゼルバイジャンの国営石油会社は28日、パイプラインは軍が守っていると指摘した。

国連安保理は29日、緊急会合を開き、停戦を呼びかける見通しだ。専門家の間では、アゼルバイジャンがロシアや国際社会の働きかけを受け、一定の軍事的成功を収めた後に停戦に応じるシナリオも取りざたされる。だが、アルメニア側の激しい抵抗も予想され、紛争の行方は予断を許さない。

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