/

「ひと言」で言えれば企画は通る 放送作家の発想術

『企画は、ひと言。』

一生懸命調べて構想を練り上げ、資料も丁寧に作った企画書がなかなか通らない――。そんな悩みを持つビジネスパーソンは多いだろう。企画はまず、提案する相手に伝わらなければ意味がない。今回紹介する『企画は、ひと言。』は、「世界ふしぎ発見!」や「TVチャンピオン」をはじめ数多くの人気テレビ番組を担当した放送作家が「通る企画」の作り方を指南した一冊だ。

◇   ◇   ◇

石田章洋氏

著者の石田章洋氏は1963年岡山県生まれ。30年以上にわたりテレビ局のバラエティー番組、情報番組、クイズ番組、報道番組など幅広いジャンルで企画・構成を担当してきました。主な番組に「世界ふしぎ発見!」「TVチャンピオン」「情報プレゼンター・とくダネ!」「BSフジLIVEプライムニュース」などがあります。

「世界ふしぎ発見!~エディ・タウンゼント青コーナーの履歴書」は第45回コロンバス国際フィルム&ビデオ・フェスティバルで最優秀作品賞を受賞しました。主な著書は『スルーされない技術』『ビジネスエリートは、なぜ落語を聴くのか?』『人気情報番組の放送作家がこっそり教える タダでテレビに取り上げられる方法』などです。

この本を「ひと言」で言うと

冒頭にこう書かれています。『ひと言で言うと、この本は…… 思いをカタチにするための本です。モヤモヤが「!」に変わり、ウケるアイデアがおもしろいように実現するようになります。』

本書が誕生した背景には、30年以上前の挫折経験があります。本人によると駆け出しの頃は「ダメ企画マン」でした。どんな企画を立てても、全く通らない状態が続いていたといいます。ストレスから足が動かなくなり、ついにテレビ局の企画会議を黙って欠席する失態までおかしてしまいます。「企画が苦手な放送作家なんて、先端恐怖症で包丁が握れない料理人みたいなもの、もはや商売になりません。この先どうやって生きていこう……」。一時はこう思い詰めますが、台本を書くことが何より好きだった著者は、「企画恐怖症」を克服する道を選びました。

 以来、なけなしの貯金をはたいて、古今東西のあらゆる企画立案や発想術に関する本を購入しては読みました。
読書の他には、脳にアルファ波を発生させて発想を豊かなものにすると謳(うた)う、怪しげなヘッドギアも買いました。
「真っ暗な部屋で瞑想(めいそう)すれば潜在意識からアイデアが湧き出る」と聞けば、実行しました。それでも何も浮かばなければ、壁に後頭部を打ちつけたりもしました。
そんなある日のこと、名だたるクリエーターの方々が書いた、十数冊にも及ぶ企画術の本に「ある共通のこと」が書かれていることに気づいたのです。
「それ」は決して、大きく書かれているわけでも、詳しく説明されているわけでもありません。ですが、実績を残しているクリエーターの本には、ほんの2、3行ほどでも、必ず「そのこと」が書かれていました。
(はじめに 13~14ページ)

著者がそれを実践してみると、なんと「企画が面白いように通るようになった」と言うのです。それから30年間、著者は大好きなテレビの仕事を続けています。その事実が、コツの有効性を証明しているといえます。

トンガリ幻想を捨てる

そのコツとは、本書のタイトルにある通り「ひと言で言える企画を作ること」です。ひと言で表現できる企画とは、どんなものでしょうか。歴史を振り返って、2つのサンプルを取り上げます。一つは、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏が「iPod」を生んだときの言葉。「1000曲をポケットに」です。もう一つが、女性のファッションに革命を起こしたココ・シャネル氏の作品を説明するフレーズです。「着飾るためでなく、生きて働くための服」。いずれも、2人の作り上げた製品のイメージが瞬時に湧いてくると思いませんか。

さて、いい企画をつくるには具体的にどうすればよいのでしょうか。ここでは、プロデューサーにウケるための「アイデアの5原則」を掲げます。その1は『「トンガリ幻想」は捨てよ』――。斬新なアイデアにこだわっていると、ヒット企画は生まれないというアドバイスです。

 実際に企画は、斬新であれば斬新であるほど通りにくくなります。なぜなら企画採用者に「見えない」からです。繰り返しになりますが、実現する企画の条件のひとつは、「See」。「見える」ことです。
 では、見える企画を作るためには、どうするのか。
まずはあなたの中の「トンガリ幻想」を捨てることから始めてください。
トンガリ幻想とは、「これまでになかったまったく新しい企画」をひねりだそうとがんばりすぎること。
 考えてもみてください。
 「100%新しい企画」は、誰にも見えません。もしかしたら、それを表現する言葉すらないかもしれません。それでは何をどう実現すればよいのか、誰にもわかりません。
 そう考えてみると、「100%新しい企画」はむしろNG企画、未来永劫(えいごう)実現することはないと言って過言ではないでしょう。
 第一、これまで誰も思いつかなかったような斬新なアイデアは、なかなか降りてくるものではありません。
 仮に、時代の二歩も三歩も先を行く先進的なアイデアを思いついたとしても、その素晴らしさはなかなか理解してもらえません。時代が追いついていないからです。
時代の半歩先くらいでないと、誰もついてこれません。
(第2章 ウケるアイデアの5原則 87~88ページ)

ウケるアイデアの5原則の「その2」以降はこう続きます。「ベタ」というのは「定番」とほぼ同じ意味です。

【原則2】「ベタ」の力を利用せよ
【原則3】"ベタ"に「新しさ」をプラスαせよ
【原則4】「ベタ」と「新しさ」の理想のバランスを目指せ
【原則5】ヒットする企画のカタチを知る!

 「定番」は長い時間をかけて評価が固まってきたプロット。そこをきちんと押さえつつ、いろいろなものを組み合わせたり、組み合わせの方法を変えてみたりすることで、ヒットが生まれるわけです。

「何のために」を意識する

次いで、著者は過去のヒット企画を例にとりあげながら、「ひと言でまとめる」ためのテクニックを伝授しています。その際、忘れてはならない原則があります。「何のために」を意識することです。「ニーズ」が分からなければ、使える企画にはなりません。

 企画とは「世界を進化させるもの」です。
それを「ズバリ!」言い表すものが、この目的に当たるのです。
実を言うと、「何のために」は、企画書やプレゼンで使う「見えるひと言」には含まれません(もちろん、企画書の"企画意図"として説明は必要です)。
しかし、「ひと言」をつくる最初のステップでは、絶対に欠かせないといってもいいくらい、大切な要素なのです。
「この企画は誰の役に立つのか」
「どんな風に世の中をよくするのか」
「誰を笑顔にするのか」
こうした「そもそもなんのために?」という企画の目的を強く意識していないと、つくり出した「ひと言」が独りよがりなものになってしまいます。
それでは、人を動かせない――つまり、通らない、実現しないNG企画で終わってしまうのです。
(第4章 「ひと言」企画の発想法(2) アイデアをひと言にまとめる技術 192ページ)

最後に、著者が推奨する、アイデアが出るための行動を紹介しましょう。一つはメモを取ること。それから、インターネット検索に頼らないこと、新聞を読むこと、本屋を活用することです。デスクに座っているだけではアイデアは浮かびません。あなたも、この本を読んだら、早速オフィスを出て、街を歩いてみませんか。

◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・桜井保幸

プレゼンテーションの世界では「ピッチトーク」や「エレベータトーク」などの言葉が一般化し、企画というのは短くてひと言で説明できるものがいいというのは、少しずつ常識になってきているのかもしれません。

でも、どうすればひと言で言えるような企画ができるのか? 本書ではその秘訣、成功の方程式が、テレビ番組や映画制作の現場などの事例とともに語られます。

本書にあるエピソードで、私のツボに一番はまったのは、「映画『エイリアン』をひと言で言うと、どんな話?」です。答えは書きません。本書の中を探してみてください。

 一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

企画は、ひと言。 (日経ビジネス人文庫)

著者 : 石田 章洋
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 880 円(税込み)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン