米巨大IT「FAMGA」の買収戦略 コロナで様変わり

CBインサイツ
スタートアップGlobe
コラム(テクノロジー)
2020/10/5 2:00
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「FAMGA」各社のアプリ

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 米国の巨大テック企業のスタートアップ投資姿勢に変化が表れている。GAFA構成企業のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムにマイクロソフトを加えた5社「FAMGA」の2020年の買収件数は現在のペースだと33社となる見通しで、過去最高だった17年の52社を下回るほか、19年の46社にも届かない。買収に代わり、成長途上のスタートアップに出資するケースが増えているほか、投資先が幅広い業種に及ぶようになっている。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に伴い、企業の将来のプランや投資、買収活動は様変わりしている。

世界保健機関(WHO)が3月11日に新型コロナをパンデミックと宣言して以降、多くの企業がこの機を生かしてライバルに先行しようと戦略をシフトしている。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

ビッグテックと呼ばれる米巨大ハイテク企業「FAMGA」(編集部注:「GAFAM」と呼ぶことも)も戦略シフトを加速させている。消費者がオンラインに費やす時間と資金がこれまで以上に増えるなか、ビッグテックの一部はM&A(合併・買収)や投資の戦略見直しを進めている。資金調達の増加を受けて出資に力を入れる一方、買収をやや控えている。

今回のリポートでは、パンデミック以降のビッグテック5社の全ての買収と、その意味について取り上げる。

■ビッグテックの買収トレンド

ビッグテックに買収された企業の数は減っている。20年のFAMGA5社の買収件数は今のペースでは33社となる見通しで、19年の46社、過去最高だった17年の52社を下回る。

ビッグテックの買収、減少傾向に
(16年~20年<9月2日時点>のFAMGAによる買収件数)

ビッグテックの買収、減少傾向に
(16年~20年<9月2日時点>のFAMGAによる買収件数)

買収が減っているのは、ビッグテックがスタートアップの完全買収よりも、出資に資金を投じていることが一因といえる。5社は20年7~9月期だけで、インドの通信最大手リライアンス・ジオ(Reliance Jio)や米電気自動車(EV)メーカー、リビアン(Rivian)などの資金調達ラウンド4件に総額75億ドル以上をつぎ込んでいる。

買収した企業は拡張現実(AR)/仮想現実(VR)からフィンテック、クラウド、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」に至るまで様々な分野に及ぶ。買収対象が幅広い業種に及んでいるのは、ビッグテックのM&A戦略が各社によって大きく異なることを浮き彫りにしている。

下記のビジネス相関図は、パンデミック(20年3月11日)以降のビッグテックによる単体での買収を示している。

ビッグテックによるパンデミック以降の買収企業
(20年3月11日~9月1日のFAMGAの企業買収、公表ベース)

ビッグテックによるパンデミック以降の買収企業
(20年3月11日~9月1日のFAMGAの企業買収、公表ベース)

■買収が活発なのはアップルとマイクロソフト

5社のうちパンデミック以降で最も買収が活発なのはアップルとマイクロソフトだった。両社はそれぞれ7社を買収した。

アップルは今年に入り8社を取得し、パンデミック以降には天気予報アプリの米ダークスカイ(Dark Sky)、アイルランドの音声認識スタートアップ、ボイシス(Voysis)、VRイベントをストリーミング配信する米ネクストVR(NextVR)など7社を買収している。8月にはVR企業の米スペーシズ(Spaces)も取得した。スペーシズは16年に米アニメ制作大手ドリームワークス・アニメーションから分離独立した企業で、最近ではリモートワーク時代の充実を図ってVR空間からビデオ会議ツール「Zoom」に参加できる機能を開発した。

アップルはパンデミックの影響で企業の評価額が下がったのに乗じ、他社を安く買収しているとされる。20年4~6月期に買収した企業は5社と、四半期ベースで5位以内に入る多さだった。

マイクロソフトもパンデミックになって以降、7社を買収している。同社の買収はクラウドのセキュリティーやIT(情報技術)ソフトウエアの開発など法人向けテクノロジーに集中している。3月には次世代通信規格「5G」のクラウドサービスを手掛ける米アファームドネットワークス(Affirmed Networks)を買収。6月にはIoTのサイバーセキュリティー企業、米サイバーX(Cyber X)、5月には定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の英ソフトモーティブ(Softomotive)を取得した。

■他の3社は買収以外に資金を投入

一方、アマゾン、グーグルの親会社の米アルファベット、フェイスブックによるパンデミック以降の買収はそれぞれ1~2社にとどまっている。

・アルファベットは8月に業務システムのクラウド移行を手掛ける米ストラトゾーン(StratoZone)、6月にスマートグラス開発のカナダのノース(North)を買収した。

・アマゾンは6月、自動運転技術開発の米ズークス(Zoox)を12億ドルで買収した。

・フェイスブックは6月、スウェーデンのデジタル地図企業、マッピラリー(Mapillary)を買収した。買収額は公表していない。

アルファベット、アマゾン、フェイスブックの3社は3月以降の買収は少ないが、他社への出資には数十億ドルをつぎ込んでいる。

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