名古屋、中心部も地価9%安 コロナで再開発に影

地域総合
愛知
2020/9/29 16:50
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中部地方の地価に下押し圧力が強まっている。国土交通省がまとめた2020年の地価調査(基準地価、7月1日時点)によると、愛知の商業地は8年ぶりに下落した。中でも名古屋市中心部の栄3丁目はマイナス8.9%と、下落率が全国で4番目にきつかった。新型コロナウイルス禍で不動産取引が鈍り、オフィスや商業施設の需要も失速しつつある。

下落率が大きかった名古屋市中心部の栄地区

下落率が大きかった名古屋市中心部の栄地区

愛知の商業地は下落幅が1.1%と、全国平均(0.3%)を上回った。下落は12年以来。当時は08年秋のリーマン・ショック以降、4年連続で下がっていた。地価は景気にやや遅れて反応する傾向がある。コロナ禍で経済活動の停滞が長引けば、愛知の地価も調整局面に入る可能性が出てきた。

愛知の地価は名古屋市内の影響を受けやすい。同市では全16区が上昇した19年から一転、20年は14区が下げに転じた。下落率が愛知で最大、全国でも4番目にきつかったのは同市中区栄3丁目917番(8.9%)で、価格は1平方メートルあたり255万円だった。

老舗百貨店「丸栄」(18年6月閉店)の跡地付近の一等地で、現在は時間貸しの駐車場になっている。周囲の大規模な再開発期待から18年7月から1年間で19.7%高騰。19年7月以降も上昇基調は続いていたが、20年春先からのコロナ禍で一転、急落した。

名古屋市内ではホテルの休業や有力テナントの撤退が相次ぎ、一等地ほど不動産投資マインドが落ち込んだ影響を受けやすい。中部最大の繁華街、錦3丁目では下落率が4%弱、栄5丁目も2%近くに達した。

もともと、周辺のビルではテナントにPR目的で多少賃料が高くても入居するアンテナショップが少ない。内外のアパレルブランドが撤退した後、ドラッグストアが入っているが、「コロナ禍の訪日外国人(インバウンド)減少などで他にテナントが見つかりにくい状況」(CBRE名古屋支店の河本納幸ディレクター)という。

リニア中央新幹線の開業を見据え再開発が続いてきた名古屋駅周辺も地価は芳しくない。下落率は駅の東側が5.2%、西側は7.0%だった。

愛知の地価調査をまとめた不動産鑑定士、小森洋志氏は「東京と大阪では19年末まで地価が急上昇していた。栄はその間の上昇幅が小さかった分、コロナ禍の下落が通年ベースで大きく影響した」と説明、全国でも下げ率が目立つという。

焦点は今回の地価下落が一過性か、それとも本格的な調整局面入りを示唆しているのかという点だ。コロナの新規感染者数は一時より増加傾向が鈍っているとはいえ、在宅勤務などのテレワークを常態化する企業は多い。小売り、外食といった商業施設は外出の自粛やインターネット通販への代替が進んでいる。オフィス、店舗の需要は盛り上がりにくい地合いだ。

三鬼商事名古屋支店によると、1月に1%台だった名駅地区のオフィス空室率は、7月は3%台に跳ね上がった。同社の川口真弥支店長は「オフィスに余剰感を感じている企業が縮小に動き始めている」と話す。

一方、愛知の地価上昇率では上位5地点のうち、4地点が名古屋市内だった。目立つのは栄地区から金山地区の中間エリア。19年に2ケタ台だった伸び率は2~3%台に縮小したものの、名古屋駅周辺や栄地区で店舗を設けられない事業者の需要は底堅いという。

市町村別で上昇したのは豊橋市(0.5%)、豊田市(0.3%)のみ。25市町だった19年から大幅に減った。豊橋では24階建てでマンションや複合商業施設を備えた「ザ・ハウス豊橋」の21年開業をはじめ、駅前で再開発が進む。

知多半島や東三河地方では人口減少に伴う地価下落に歯止めがかかっていない。下落率が最もきつかったのは南知多町(5.4%)で美浜町(4.0%)、新城市(3.6%)が続いた。3市は19年も3~5%台のマイナスだった。

■住宅地、名古屋一等地や刈谷は上昇 知多は下落続く
 愛知の住宅地では、コロナ禍で地価の二極化がさらに鮮明になっている。全体では9年ぶりに下がったものの、名古屋市の一等地や刈谷市の駅前は底堅いマンション販売を背景に上昇した。
 住宅地全体ではマイナス0.7%と、全国平均と同じだった。愛知の下げは2011年調査(0.5%)以来。下落率の上位5地点は知多半島が中心で、5~7%台だった。人口減に歯止めが掛からず、19年調査でも3~6%台の下げだった。
 コロナ禍でも富裕層を中心に新築マンションへの需要は根強い。県内の上昇率1位は、名古屋市東区橦木町3丁目4番(3.8%)で、価格は1平方メートルあたり54万5千円だった。
 付近で19年6月に竣工した「マストスクエア橦木町」は、価格1億円台の部屋も備える。販売元の積水ハウス不動産中部によると、全132戸のうち大半が売れた。同じく東区では「マストスクエア東白壁」も21年4月の竣工を控える。同社の担当者は「売れ行きはコロナ禍でも予定通り」と話している。
 不動産調査の新東通信(名古屋市)によると、東区や中区、中村区といった名古屋市中心部では、新築マンションの価格がコロナ禍でも上昇傾向という。商業地ほど景気の波を受けにくいうえ、「リニア開業や再開発といった中長期の住みやすさから市内中心部を選ぶニーズが底堅い」。
 愛知では人口の増えている刈谷市の住宅地も人気だ。トヨタ自動車グループの生産拠点が集積しているほか、名古屋市に電車で20~30分程度のアクセスの良さからファミリー層らの流入が目立つ。地価上昇率の2~3位は刈谷駅前で2%前後だった。
 駅前に21年5月竣工予定の21階建てタワーマンション「アルバックスタワー刈谷ステーション」は全81戸が完売した。
 豊田市内でも2地点が2%弱上昇した。「豊田や刈谷の駅前では住宅の需要に比べて供給が少ない。コロナ禍でも価格が落ちにくい要因になっている」(不動産鑑定士の小森氏)ようだ。
(細田琢朗)
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