トイレ紙、近畿はシングル派優勢 お得感重視?
とことん調査隊

関西タイムライン
2020/9/29 2:01
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「シングル」「ダブル」どちらですか?――。ベッドのサイズでも、お酒の飲み方でもなく、自宅のトイレットペーパーのお話。関西はなぜかシングルが多数派で、会社の上司は在宅勤務中に何度も買いに行ったという。両者にどんな違いがあり、どちらを選ぶべきなのか。その機能や歴史をたどりながら探った。

まずは大阪市内のドラッグストアへ。店頭に複数のブランドの商品が並び、シングルとダブルが隣り合う陳列も。両者の違いは文字通り、紙が1枚か、2枚重ねかというもの。価格は変わらないが、1ロール当たりの長さはシングルが50~60メートル、ダブルはその半分というのが一般的だ。

来店客に好みを聞くと、大阪府東大阪市の主婦(43)は「ダブルはすぐなくなる。子どもがまだ1歳なので、できるだけ買い物の回数は減らしたい」とシングルの一択。大阪市北区の男性会社員(63)も「肌触りはダブルだが、1ロールが長くもつシングルにしている」と語るが、「たまに妻がダブルを選ぶ」と家庭内でも好みが違うようだ。

全国的にはどうだろうか。大手メーカーの王子ネピア(東京・中央)によると、全国の2019年度の販売数量はダブルが66%で、シングルが32%とダブルが優勢だ。だが地域別に見ると数字は大きく変わる。近畿ではシングルが53%でダブルが46%と逆転し、他のメーカーも同じような結果になるという。

多くの社が「この傾向はかなり前から続いている」と語るが、理由については「よくわからない」と口が重い。そんな中、あるメーカーの担当者が「あくまで推測ですが……」と断りながら、「関西人の気質が影響しているのでは」とささやいてくれた。

実はシングルの方がより経済的だという。トイレ文化を研究する大阪観光大観光学研究所の学外研究員、山路茂則氏は「ダブルの1ロールの長さはシングルの半分。だが1回の使用で巻き取る量は半分では収まらず、ダブルの方が早く使い切る」と説明する。つまり倹約という点で、わずかではあるが有利なのだ。

大阪文化に詳しい相愛大学の前垣和義客員教授も「関西人は同じ価格の商品が並んでいたら、どちらが得か考え、使い心地よりも経済的な合理性を求める」とうなずく。底流に商売人気質があり、わずかな倹約でも積み重なれば、大きな得につながると肌身で知っているというわけだ。

そもそも紙でお尻を拭く文化はいつ始まったのだろうか。山路氏によると、古代の日本では紙ではなく「ちゅうぎ」という細い木片でこそぎとっていた。平安時代には書き損じた紙などを貴族が使うようになり、一般庶民に広がったのは江戸時代からだ。

ロール状のペーパー誕生はさらに後だ。家庭紙史研究家の関野勉氏によると、1871年、米国の発明家が特許を取得。日本では1955年、日本住宅公団(現・都市再生機構)が発足し、「団地暮らしと水洗トイレが一般家庭に普及して広がった」と語る。

そして、ダブルが日本で商品化されたのは70年ごろ。シングルに比べ紙が薄く、間に空気の層を含むため、使い心地が柔らかく吸水性にも優れる。温水洗浄便座の浸透とともに人気になった。

近年の新たな売れ筋は、1ロールが通常の1.5倍などの長尺タイプの製品だ。大王製紙(東京・千代田)によると、2011年度には市場全体に占める長尺タイプは8.8%だったが、19年度には21.2%に。新型コロナウイルス禍の下での生活でも、備蓄に便利で買い物の回数も減らせる、と人気を高めている。

トイレの紙は進化を続けており、現在は3枚、4枚重ねの製品もあるという。東京出身の記者(28)はこれまでダブルしか買ったことがなかったが、違う製品も試してみようと思った。(玉岡宏隆)

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