米大統領選、納税問題が新たな争点に 29日TV討論

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2020/9/28 21:00 (2020/9/29 6:40更新)
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トランプ米大統領(右)とバイデン前副大統領は29日のテレビ討論会で初の直接対決に臨む=AP

トランプ米大統領(右)とバイデン前副大統領は29日のテレビ討論会で初の直接対決に臨む=AP

【ワシントン=永沢毅】米大統領選は29日夜(日本時間30日午前)、1回目のテレビ討論会を開催する。共和党現職のドナルド・トランプ大統領(74)と民主党候補、ジョー・バイデン前副大統領(77)が初の直接対決に臨む。27日にはトランプ氏の納税記録を巡る新たな疑惑も浮かび、両候補の舌戦が熱を帯びる。

「私は多額の税金を支払ってきた。フェイクニュースだ」。トランプ氏は27日、ホワイトハウスの記者会見でこう語気を強めた。2016年の当選前の15年間のうち、10年分の所得税を連邦政府に納めていなかったとの米紙ニューヨーク・タイムズの報道を否定した。

同紙によると、当選した16年と就任1年目の17年の納税額は各750ドル(約8万円)にとどまったという。1970年代以降の大統領の慣例だった納税記録の開示をトランプ氏は拒否し、民主党は納税逃れのため不適切な取引があったとの疑惑を投げかけてきた経緯がある。もっとも、同紙は現段階で違法性に関しては明らかにしていない。

米CNNはトランプ氏の納税逃れ疑惑が、ウィスコンシンやペンシルベニア、ミシガンなどの激戦区「スイング・ステート(揺れる州)」のブルーカラー層の支持に影響を与えると分析している。トランプ氏が支払った年間わずか750ドルの納税額が多くの一般の米国人の納税額よりも少ないことをあげ「飛行機やゴルフ場を所有する人物の負担として正当なのだろうか」と指摘している。

29日から計3回の討論会は選挙情勢を変える可能性もある終盤戦の天王山だ。初回は中西部オハイオ州クリーブランドで開かれ、(1)両候補の歩み(2)連邦最高裁判所(3)新型コロナウイルス(4)経済(5)人種と暴力(6)選挙の正当性――の6テーマを15分ずつ、計90分討論する。

バイデン氏は世界最多の死者を出したトランプ氏の新型コロナへの対応に的を絞り、大統領として不適格だと浮き彫りにする腹づもりだった。今回の疑惑でトランプ氏に打撃となる新たな攻撃材料を手にした形だ。

全米の支持率で劣勢のトランプ氏は討論会で選挙戦の流れを変えようと懸命だ。「討論会の前後に寝ぼけたジョー(・バイデン氏)に薬物検査をするよう強く求める」。27日にツイッターにこう書き込んだ。「バイデン氏の討論会の出来にはムラがあり、その原因は薬物ではないか」というのがその言い分だ。

背景にはバイデン氏が民主党候補を絞り込む予備選の討論会で精彩を欠く場面が多かったことがある。保守系メディアはバイデン氏の高齢を理由に適格性や判断能力にたびたび疑問を投げかけている。

政策面では、トランプ氏はバイデン氏が掲げる3兆ドルにのぼる過去最大規模の増税プランをやり玉にあげそうだ。急進左派の影響を受けていると印象づけ、「社会主義」のレッテルを貼って穏健派の離反を促す狙いがある。バイデン氏が副大統領在任中に次男ハンター氏が中国、ウクライナ両国でビジネス上の関わりを持った疑惑も取り上げるとみられる。共和党は「利益相反がある」などと批判してきた。

米連邦最高裁判所判事の人事も焦点となる。トランプ氏が巻き返しに向けて支持層を鼓舞しようと保守派の女性を指名したのを受け、バイデン氏は27日の記者会見で「新大統領と議会の選挙が終わるまで指名を承認してはならない」と阻止に全力をあげると強調した。最高裁の保守派支配が進めば、人工妊娠中絶の禁止や銃保有の容認といったリベラル派が容認できない施策が進む可能性がある。

トランプ氏は27日、オバマ前政権の成果である医療保険制度改革法(オバマケア)を連邦最高裁で無効と判断することで「より素晴らしく安価な代替案に取って替える」とツイートした。オバマケアの廃止はオバマ氏を支えたバイデン氏にとっては看過できない。

大統領選の最終盤にあるテレビ討論会は過去にも勝敗を決する分水嶺ともなってきた。政策の中身に限らず、見た目や表情、しぐさといった候補者の人柄も、大統領としてふさわしいかどうかをみる手がかりとなる。

初のテレビ討論会を開いた1960年はそれを象徴する語り草となっている。共和党のニクソン候補は病み上がりで顔色が悪い中で化粧を拒み、民主党のケネディ候補は万全なメークで若々しさを印象づけた。2人のテレビ映えの違いが、ケネディ氏勝利の流れを決定づけたとされる。

米ジョージ・ワシントン大のフランク・セスノ・メディア広報学部長の話
米ジョージ・ワシントン大のフランク・セスノ・メディア広報学部長

米ジョージ・ワシントン大のフランク・セスノ・メディア広報学部長

29日の米大統領選のテレビ討論会は見るに堪えないものになるだろう。
 トランプ大統領は何でもありの姿勢だ。攻撃的な討論を展開するだろう。支持基盤拡大ではなく、既存の支持層をいかに熱狂させて投票率を引き上げるかに重点を置く。連邦最高裁判所判事への保守派指名はその典型で、討論会でも持ち出し自らの成果を誇るだろう。
 まずバイデン前副大統領は一般的な期待値を超えなければならない。トランプ氏はバイデン氏を「寝ぼけたジョー」と呼び、思考回路や行動が遅いと主張してきた。バイデン氏にとって話のテンポや反論のスピードが重要で、戦士のような対抗姿勢を見せる必要がある。有権者に印象的な場面を残せるかも焦点だ。
 トランプ氏はバイデン氏を「極左勢力」とレッテル貼りをするだろう。バイデン氏は左派の主張に同情する面があると指摘しつつも、あまりにも極端な主張には深入りしないという方針を貫くべきだ。ただ(中道派と左派で意見が大きく割れる)バイデン政権が指名する最高裁判事や治安対策では曖昧な立場を取りにくく、どのように対応するか準備が必要だ。
 トランプ氏の虚偽発言への対応も難しい。バイデン氏は大統領らしくあるべきで、すべてのウソを正すファクト・チェッカーになるのは危険だ。事前にトランプ氏がウソを言うだろうポイントをいくつか絞り、ひな型となる反論を用意しているだろう。(聞き手はワシントン=中村亮)

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