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東京・竹芝に最先端オフィスビル コロナ対応に挑む

東京五輪・パラリンピックの開催をにらみ、都市再生への民間投資が加速してきた東京。9月、竹芝エリアでもまた一つ、最先端のオフィスビル「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」が誕生した。ソフトバンクグループなどが入居を予定し、接触を避けたり、混雑を回避したりする仕組みを整えた大型複合施設だ。新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが定着するなか、新しいオフィスの形に挑んでいる。

オフィス棟と住居棟で構成する「東京ポートシティ竹芝」(東京・港、延べ床面積約20万平方メートル)は最先端技術を駆使しており、スマートシティーを掲げる。東急不動産と鹿島が開発した。商業施設やホール、スタジオ、貸会議室などもある。その中核をなすオフィスタワー(40階建て)ではウィズコロナ時代の光景が垣間見える。

朝8時。出勤してきたオフィスワーカーたちは社員証をかざすことなく顔認証でゲートを通過、エレベーターでボタンを押さずに職場のフロアに到着する。入館からどこにも手を触れることなく自分のデスクにたどり着ける。スマートフォンの画面を見れば、エレベーターホールで順番待ちをする人の多寡、何階のどこのトイレが空いているかも分かる。仕事が終われば、行きつけの居酒屋の混み具合もチェック可能だ。

スマートフォンでビル内での催しに関する情報などを得られる(東京ポートシティ竹芝)

当初の計画ではビルに設置した約1300個のセンサーやAI(人工知能)カメラを活用し、利用者が効率的に移動できるよう案内する方針だった。だがコロナ禍のため、人と人との接触を少なくするこうした仕組みにしたという。

「ウィズコロナの働き方改革への挑戦の場にちょうどいい」。東急不動産の岡田正志社長は最新鋭オフィスビルの意義をこう説明する。東京ポートシティ竹芝オフィスタワーには他にも斬新な仕掛けが満載だ。

ビル内を歩けば、多彩なロボットとすれ違う。カフェの飲み物を運ぶソフトバンクの自律走行ロボット「Cuboid(キューボイド)くん」、AI搭載型の掃除ロボット「Whiz(ウイズ)」、シークセンス(東京・千代田)の警備ロボット「SQ-2」。特に警備ロボは単独でエレベーターに乗り、各フロアを行き来しながら見守る。

最先端オフィスビルの旗振り役は9~39階に本社を移転するソフトバンクグループとソフトバンクだ。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」などを用いて、スマートシティーの実証実験の場として本社ビルを生かす。「あと1~2年で『これがスマートシティーだ』とビシッと言える世界にしたい」。ソフトバンクの宮内謙社長は言う。

東京ポートシティ竹芝は交通の便もいい。東京都心に立地し、JR浜松町駅とは歩行者デッキで直結。船着き場から出るリムジンボートで羽田空港にアクセスすることもできる。スマートシティーを実現する情報通信インフラとの相乗効果で、「満室稼働」(東急不動産の岡田社長)でスタートした。

ただコロナ禍で在宅勤務が広がり、オフィス市況への影響は大きい。ゲーム開発のコロプラがオフィス規模を11月までに現状の6割に減らし、富士通は今後3年後をメドに面積を半減させる。都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は8月まで6カ月連続で上昇している。一方で「オフィスに集うことで色々なアイデアやコラボレーションが生まれる」と、生産性向上のためオフィスを改めて評価する声もある。

経済協力開発機構(OECD)のデータによると、2018年の日本の時間あたりの労働生産性(就業1時間あたりの付加価値)は46.8ドル(約5000円)。米国の74.7ドル(約8000円)の6割程度の水準にとどまる。OECD加盟国36カ国中で21位。労働生産性の向上を後押しし、高付加価値のサービスを生み出すことが、ウィズコロナ・アフターコロナのオフィスの役割だろう。

安心して働ける東京ポートシティ竹芝オフィスタワーは、新しいオフィスのひな型になり得る。成功すれば、他の開発プロジェクトに波及していく可能性がある。それにはソフトバンクの宮内社長の言葉通り「これがスマートシティーだ」と言えるようになることが条件だ。近隣では東京五輪の大会関連車両の基地となる旧築地市場跡地の再開発などが予定されている。竹芝プロジェクトは大きなミッションを背負っての船出となった。

(文 前野雅弥 映像 近藤康介)

1964年五輪の遺産が進化「賢いゴミ箱」


 1964年東京五輪のレガシー(遺産)が2020年に大きな進化を遂げている。遺産とは街の美化を支えたゴミ回収用の大型バケツ。その当時、ポリエチレン製のゴミ容器「ポリペール」を商品化した積水化学工業が今秋、センサーでゴミの量を把握しゴミ箱が満杯にならないようにする「賢いゴミ箱」を開発、東京ポートシティ竹芝(東京・港)で本格導入される。
センサーを搭載した「賢いゴミ箱」が200カ所に設置される予定(東京ポートシティ竹芝)
 積水化学工業子会社の積水マテリアルソリューションズ(東京・中央)が開発した「スマートレベル」はゴミを投入するための開口部を備えたゴミ箱の上蓋に超音波センサーを付け、たまったゴミの量を把握できるシステム。センサーからの情報は無線の通信網を経由して施設管理システムに集約され、ゴミが満杯になりそうなゴミ箱を優先的に清掃できるようになるという。
 東京ポートシティ竹芝に本社を構える予定のソフトバンクはビル内の約200カ所にセンサー付きのゴミ箱を設置する方針。ビル利用者はゴミ箱が満杯になっていてゴミを捨てられないという不快な経験を回避できそうだ。
 積水化学工業にとって、ゴミ問題の解決策は、64年大会が都市の生活様式を変えた歴史とともに思い入れが深いという。
 東京都は60年、杉並区をモデル地区にして、持ち運び可能なゴミ容器を各家庭から定時回収する仕組みをスタートさせた。前年に開催が決まったものの、急速な都市化に伴い家庭ゴミが急増し、街の美化が開催都市としての課題になっていたためだ。ゴミ容器による定時回収が本格化し始めると、積水化学は61年に「ポリペール」を発売。東京だけで200万個も売れるヒット商品になった。
 ポリペールは今も現役の商品。「ゴミ回収をめぐる事業は脈々と受け継がれてきた」と同社は強調する。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」時代の賢いゴミ箱は21年2月から本格稼働する見込み。ポリペールが「還暦」を迎える年、新たなレガシーへのチャレンジが始まる。
(山根昭)

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