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児童の国際理解、大学生が指導役 オンラインで交流会

明治大の学生はイスラム教徒の転校生を迎えた小学校の日常をアニメで描き、教材に使用した

小学生に国籍などが異なる人々との違いを理解し、地域で共に生きる姿勢を学んでもらおうと、大学生が指導役を買って出ている。様々な文化的背景を持つ人との関わり方を考える機会は、グローバルな人材を育てる上でも欠かせない。新型コロナの影響が長引くなか、学生らはオンラインを駆使し国際感覚の芽生えを後押しする。

パソコンの画面に、ある小学校の教室内の風景がアニメーションで映し出された。操作するのは明治大の学生7人。動画と音声はオンラインで結ばれた小学5~6年の児童32人の端末に届いている。「インドネシアから転校生が来たよ」。学生の声と同時に、画面にはヒジャブと呼ばれるスカーフで髪を首まで覆った女子児童が現れた。異国から転校生を迎えた小学生らの物語が始まった――。

子どもたちが異なる文化を身近なものとして理解することを目的に7月下旬、国際日本学部の山脇啓造教授のゼミがワークショップを開いた。子育て情報サイトを通じ、国内のほか、カナダや中国からも日本人の児童が参加した。アニメは学生らの手作りだ。

アニメでは、日本語の不自由な転校生が授業から取り残されそうになるといった場面ごとに課題を用意した。児童が悩んだのは服装の違いが原因で転校生が陰口をささやかれたシーン。「服装の理由をみんなに説明しよう」「先生に相談してみては」「先生がいなかったらどうするの」などと様々な意見が上がった。

指導役の明治大3年、菊島百佳さん(21)は「外国人の友達に対して自分に何ができるのか。異なる文化を理解する上での第一歩になる機会を子どもたちに提供できたのではないか」と話す。

日本で暮らす外国人が増え、子どもたちが国籍の異なる同級生とクラスで名を連ねることは珍しくなくなった。2002年度以降、小学校の学習指導要領は「国際理解教育」の必要性を盛り込んでいるものの、取り扱いは任意にとどまる。授業に採用する小学校が限られるなか、大学生らが国際感覚の下地づくりに一役買っている。

国際教養大では8月、「異文化理解」をテーマにした小学生向けのオンライン交流会が開かれた。学生らは留学生とともに出演した映像を教材用に制作、20人以上の児童に「日本人には何気ない振る舞いでも、外国人は不快に感じたり驚いたりすることがある」と伝えた。外国人の受け止め方は韓国、中国、ベトナム、ドイツなどからの留学生が丁寧に説明した。

ドイツは人前で洟(はな)をすすったら失礼、中国では人に時計を贈ってはいけないなど、国や地域による違いを児童らが熱心に聞き入る。日本人学生が留学生を見ながら「友達になってみたい」と話し合う姿を、留学生の目線で捉えた映像が流れると、ある児童は「日本語で悪口を言われていると感じてしまうかも……」とつぶやいた。

兵庫県宝塚市の小学5年、安達隆稀さん(10)は「小学校に外国人の同級生がいる。今度遊ぶときは大学生に教わったことも生かしてみたい」と笑顔を見せた。

学生を指導したグローバル・コミュニケーション実践研究科長の内田浩樹教授は「当面は新型コロナの影響があるとはいえ在日外国人は増えていくだろう。外国人に出会ってから戸惑うのでは遅い」と指摘。「子どもたちが国際的に活躍する人材に育つ意味でも、語学の習得前から異文化を理解して意志を通わせようとする姿勢を学ぶことが大切だ」と話す。

明治大と国際教養大は11月にもオンライン交流会を開く予定だ。

大学以外の取り組みも。公益財団法人「しまね国際センター」(松江市)は7月、島根県立大の中国人留学生と県内の小学生6人がオンラインで交流するイベントを開き、留学生が中国の伝統文化などをクイズで紹介した。小学5年の佐々木奏美さん(11)は「最初は緊張したけれど、中国語のあいさつを教えてもらい会話ができた」と声を弾ませる。

県内に住む外国人は19年末時点で約8800人おり、10年間で3千人以上増えた。担当者は「同じ地域で暮らしながら外国人と関わったことがない子もいる。互いの距離を縮める経験を通じ、自ら声をかけられる人に育ってほしい」と話している。(金春喜)

外国にルーツ、小中の3割

 日本に暮らす外国人は2019年末に290万人を超え、過去最高となった。文部科学省によると、来日して日本語が母語でないといった理由から日本語指導が必要な小中学生は、18年度時点で約4万6千人。全国に約2万9千校ある小中学校のうち、少なくとも3割近い約8千校に在籍している。
 来日する子どもたちの母語も多様化している。中国語(23%)、ポルトガル語(22%)、フィリピン語(21%)、スペイン語(9%)、英語(5%)、ベトナム語(4%)、韓国・朝鮮語(2%)の順に多い。
 京都教育大の浜田麻里教授は「子どもたちは今後、ますます多様な文化的背景を持つ人々とかかわることになる」と指摘。「異文化を理解する姿勢は全ての子どもたちが身につけるべきもの。学校現場での教育を進めるため、文科省は、具体的な指導方法や学習に割り当てる時間数などを示す必要がある」と強調する。

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