Apple、アプリ内有料イベントへの課金免除 20年末まで
【シリコンバレー=白石武志】米アップルは25日、スマートフォン「iPhone」などのアプリ内で開くライブやセミナーなどの有料イベントに課している30%の手数料を2020年末まで免除すると明らかにした。新型コロナウイルスの影響で対面式のイベントを開けないケースが増えているのに配慮した一時的な措置だとしている。
アップルは同社の基本ソフト「iOS」上などで配信する有料アプリについて、開発者に原則30%の手数料の支払いを求めている。アプリ内で開く講演会や料理教室、フィットネス講座などのオンラインイベントで得られる収益についても、課金対象としてきた。
ただ、新型コロナの影響でこれまで対面式で開いていたイベントの継続が難しくなり、オンラインに移行するケースが増えている。アップルは新たなデジタル体験に取り組む企業や個人事業主らが規則に適合する時間的な猶予を与えるために、アプリ内イベントへの課金を一時免除することにしたという。
8月に自社のSNS(交流サイト)アプリ上で中小企業や個人事業主らが有料イベントを開ける機能を提供し始めたフェイスブックは、アップルに手数料の免除などを求めていた。8月の段階でアップルは要求を拒んでおり、フェイスブックのフィジー・シモ副社長は公式ブログを通じて「中小企業は苦労して稼いだ収入の70%しか手にできない」と批判していた。
アップルは今回、一転してフェイスブック側の要求を受け入れた格好だ。フェイスブックのシモ氏は9月25日付でブログ投稿を更新し、「企業やクリエーターは20年の残り3カ月間、30%の『アップル税』を払う必要がない」と述べた。ただ、アップルは25日付の声明で「全ての開発者に平等に適用される明確で一貫性のあるガイドラインを維持している」と述べ、今回の措置はあくまで一時的なものであると強調した。
また、アップルは2018年初めにサービスを始めたゲーム開発者については、新型コロナの影響を受けていないことを理由に今回の課金免除措置の対象としないという。詳細は明らかにしていないが、アップルのアプリ配信や課金の仕組みが「反競争的だ」として同社を訴えた米エピックゲームズを念頭に置いているとみられる。
アップルのアプリ配信と課金の仕組みをめぐっては、硬直的な手数料率などへの批判が強まっている。24日には音楽配信大手のスポティファイ・テクノロジー(スウェーデン)など13社・団体がアプリ配信基盤の公平な運営を求めるNPOを米国内に設立し、各国・地域の当局にアップルへの規制強化を働きかける動きも出ている。