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三大都市圏の地価、際立つ苦境 訪日客減で44%が下落

(更新)

新型コロナウイルスの感染拡大が地価回復を先導していた大都市に打撃を与えた。三大都市圏の全用途では調査地点の44.6%が下落となり、東京・大阪・名古屋そろって下落地点数が上昇地点数を上回った。低金利を背景に投資資金の流入は続いているとみられ、コロナ感染防止が実を結ぶかどうかに浮沈のカギがかかっている。

今年の基準地価では、訪日客需要で潤っていた地域の失速が鮮明になった。

京都市の商業地では全11区のうち9区で上昇幅が縮小。観光名所が多く集まる東山区は昨年、22.3%の上昇だったが、今年は0.9%の上昇どまり。下京区は16.6%から1.8%に、中京区は15.5%から2.1%にプラス幅が縮小した。

京都の不動産業界に詳しい経営者は「ホテルからマンションに転用する動きもあるが、20室程度のホテルだと採算が取れない。昨年着工し、今年完成したのに、営業していないホテルが多くある」と苦境を代弁する。

外国人客が訪れる定番スポットの東京・浅草。つくばエクスプレス浅草駅周辺の商業地では昨年31.1%だった上昇率が2.6%にとどまった。旅館「茶室ryokan asakusa」の担当者は「宿泊客の9割が訪日客だった。かなり厳しい状況だ」と嘆く。

大都市は利便性が高く、訪日客も集まりやすかったが、コロナの打撃も大きかった。三大都市圏では、調査地点に占める全用途の下落地点の割合が昨年の19.2%から今回は44.6%に拡大した。地方圏も59.2%から66.3%に上昇したが、三大都市圏の反転ぶりは際立つ。特に名古屋圏は自動車など製造業の不振が響き、8年ぶりのマイナスとなった。

コロナの影響は商業地を中心に表れるとの見方が多かったが、ふたをあけると住宅地への波及も浮かんだ。三大都市圏は0・3%下落と7年ぶりのマイナス。人気の高い東京23区に限っても、住宅地は1・4%上昇にとどまり、昨年の4・6%のプラスから減速した。

そうした中で大崩れを回避したのは地方の主要4市。札幌、仙台、広島、福岡では、調査地点の9割が上昇を維持した。容積率の緩和などに後押しされた中心地での大規模な再開発が下支えしている。そうしたコロナ前からの開発計画が進み、影響を小幅にとどめたといえる。

札幌はその一例で、商業地の上昇率は昨年(11.0%)より小さくなったが、6.6%に踏みとどまった。副都心として開発が進むJR新札幌駅前では、札幌学院大学のキャンパス新設やタワーマンション、200室規模のホテルの建設などが相次いでいる。

国交省「回復いったん停止」 投資マネーは流入
 国土交通省は現状について「いったん回復傾向が立ち止まった状態。今回も多くの地域では様子見の小幅な変動だとみている」とし、当面はコロナの影響がどう地価に反映されるか見極めることにしている。
 都市未来総合研究所の平山重雄氏は先行きを慎重にみる。「訪日客需要や景気浮揚といった地価上昇のエンジンがなくなった。少なくとも次の公示地価の調査時点である来年1月までは今の下落基調が続く公算が大きい」と指摘する。
 一方で、世界的にみると、日本の市況は底堅いとの見方もある。
 不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)によると、1~6月の世界全体の不動産投資額が前年同期比3割減る中、日本への投資は同6%増えた。中でも東京圏への投資額は150億ドル(約1兆6千億円)と、世界の主要都市で初めて首位に立った。
 低金利で利ざやが取りやすい投資環境があるうえ、ロックダウン(都市封鎖)が実施されないなど、世界的にみればコロナの経済的影響が小さかった面がある。JLL日本の赤城威志リサーチ事業部長は国内不動産市場を「危機下におけるセーフヘイブン(安全な投資避難先)」と表現する。
 三井住友トラスト基礎研究所の馬場高志氏は「リーマン危機時は不動産市場にその以前から過熱感があった。今回はそれほど強くない。経済の落ち込み以上には不動産価格は下がらないのではないか」とみる。一定の資金流入が期待でき、市況が冷え込むリスクは小さいとしている。

基準地価の詳細はこちらからPDFでご覧いただけます

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〈一覧表の見方〉
単位:1平方メートル当たり千円(林地のみ10アール当たり。千円未満切り捨て)
7月1日現在
四角囲み文字は住=住宅地、宅=宅地見込み地、商=商業地、工=工業地、林=林地
(注)国土交通省の用途区分見直しにより、準工業地および調整区域内宅地の区分が廃止になり、2013年の調査から住宅地、商業地、工業地のいずれかに再分類された。地名は原則として所在地。調査変更地点は前年値を空欄とした。前年値の※は今年1月1日時点の公示地価

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