コロナ禍の国連、機能せず 米中ロが自国成果強調

2020/9/25 20:30 (2020/9/26 4:55更新)
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今年は会場への入場を各国1人に制限した(21日、ニューヨークの国連本部)

今年は会場への入場を各国1人に制限した(21日、ニューヨークの国連本部)

【ニューヨーク=大島有美子、吉田圭織】創設75周年を迎えた国連が新型コロナウイルス禍で立ち往生している。22日始まった首脳級演説で各国は自国のコロナ対策の成果を強調、主導権を握ろうとけん制し合うばかりで足並みはそろわない。戦後の国際平和と安全の礎を築いてきた多国間協調の枠組みは岐路に立たされている。

「皆さんも自国を第一に考えていいんだよ」。トランプ米大統領は自身の演説をこう締めくくった。コロナを「中国ウイルス」と呼び、感染拡大の初期に「中国は国内の移動を封鎖しながら、海外への渡航を認めて感染を世界に広げた」と非難。一方で「3つのワクチンが臨床試験(治験)の最終段階にある。大量生産も進めており、ただちに配布できるだろう」と自国の対応の素早さを自賛した。

対する中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は複数のワクチンが治験の最終段階にあり「公共のものとして、途上国に優先的に提供されるだろう」と国際貢献に努める方針を強調。「私たちは断固として多国間主義の道を歩み、国際関係の核心としての国連を守る」と訴えた。習氏はコロナ関連で5000万ドルの人道支援資金など国連活動への貢献を表明し、協調に背を向ける米国の隙を突く。

ロシアのプーチン大統領も世界で初めて承認したワクチンについて「信頼でき、安全で、効果がある」と強調、ワクチン開発を巡るハイレベルの国際会議をオンラインで開くことを提案した。コロナで悪化した世界経済の回復に向けては、米国を念頭に「違法な制裁」の解除が役立つなどと訴えた。

主要国がそれぞれ国益を前面に押し出した主張を繰り広げるなか、途上国は国際協調の枠組みが機能しなくなることに危機感を募らせている。

トランプ氏が脱退を決めた世界保健機関(WHO)について、各国からは「WHOは必要だ」(フィリピンのドゥテルテ大統領)との声が上がった。特に途上国にとってはワクチンの公平な供給における役割に期待する面が大きい。南米ガイアナのアリ大統領は「コロナ対策備品の公平で透明で迅速な供給を保障する役割として、国連を信じている」と述べた。

国連は戦後の多国間協調の中心的役割を担ってきた。米国をはじめとする自国第一主義、「多国間」を唱えつつ人員と資金で存在感を強める中国と周辺国の不安――。その基盤が揺らぎつつあるところにコロナが直撃し、機能不全に陥らせた。象徴的なのが安全保障理事会だ。

「安保理は恥を知るべきだ」。24日、国連総会に合わせて開かれた安保理会合で米国のクラフト国連大使は中国のコロナ対応を批判し「コロナ後の国際平和と安全」という会合の趣旨をけなした。中国の張軍国連大使は「政治ウイルスをまん延させ、対立をつくっている」と反論し、非難の応酬となった。

国連のグテレス事務総長は「コロナは世界が直面する試練へのリハーサルだ」として、連帯を呼びかける。危機感を強める欧州勢は多国間主義について話し合う会合を総会中に2年連続で開くが、具体策は見えない。コロナで溝が広がる現状を修復できるのか。非常事態が収まった後に、国際協調を実現する加盟国の覚悟が試される。

■創立75年、安保理の決議減少


 国連のなかで唯一、法的拘束力のある決議を採択できる安全保障理事会の機能不全が鮮明になっている。地政学的な緊張は高まる一方だが、安保理の決議数は2019年まで3年連続で減少。理事国の足並みがそろわず、決議案の提出に至らないケースも多い。

75年の歴史で安保理が世界の紛争解決に重要な役目を果たすようになったのは米ソ冷戦の終結以降だ。シンクタンク国際危機グループ(ICG)のリチャード・ゴワン氏は今回の国連総会を見て「もし米中が新たな冷戦に入れば、国連は苦しむだろう。多国間外交が停止する」と警戒する。
 国連のグテレス事務総長がコロナを機に3月に呼びかけた世界の停戦は、安保理決議まで3カ月以上かかった。米中をはじめ拒否権を持つ常任理事国同士の対立は日常茶飯事だ。「決められない安保理」に紛争地域を抱える加盟国は不安を募らせる。グテレス氏も「今日の世界の状況に合っていない」と認める。
 常任理事国入りを目指す日本やドイツなどは安保理改革を訴える。今回の総会中も外相級のテレビ会議を開き、理事国拡大に向けた協力を確認した。ただ関係者は「画面で進む話ではない」とこぼす。議論は停滞しているのが実情だ。
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