自殺の悩みSNSで支え 相談4万件、なお手探り

社会・くらし
2020/9/25 18:30
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SNSで自殺に関する相談に乗る東京メンタルヘルス・スクエアの相談員(9月中旬、東京都豊島区)

SNSで自殺に関する相談に乗る東京メンタルヘルス・スクエアの相談員(9月中旬、東京都豊島区)

神奈川県座間市で2017年に男女9人が殺害された事件の裁判が30日から始まる。事件ではSNS(交流サイト)に自殺願望を投稿するなどした未成年者らが巻き込まれ、SNSを通じた相談窓口が広がる契機となった。19年度の相談は4万件を超える一方、対策の効果は見えにくく、類似事件は後を絶たない。

「親が怖く機嫌をうかがうのに疲れた。どうしても死にたい」。NPO法人「東京メンタルヘルス・スクエア」(東京・豊島)のSNSのアカウントに9月、匿名の女子高校生からメッセージが届いた。パソコンに向かう女性相談員はすぐに「何があったのか教えてほしい」と返した。

相談員は、親や学校の状況についてチャットでやりとりし「ここに気持ちを吐き出せただけでも進歩」といたわった。女子高校生からは「私にも相談ができる相手がいることが分かって良かった」と返信があり、約50分間の相談が終わった。

法人は厚生労働省と連携するSNSの相談窓口の一つ。複数のSNSで応じるが、対応した相談はツイッターだけでも20年8月は3千件超で、19年8月に比べ10倍近く増えた。チャットを通じて相談者の話を聞き取ることが活動の中心で、必要に応じて対面の窓口も紹介する。常務理事の新行内勝善さんは「まず悩みを丁寧に聞くことで気持ちが軽くなってくれれば」と話す。

SNSが普及する過程で、匿名性の高さから自殺願望や一緒に自殺をする相手を募るような投稿が目立つようになった。状況を悪用したとされるのが座間市の事件だ。白石隆浩被告(29)=強盗強制性交殺人罪などで起訴=はSNSで自殺願望がある女性を誘い出すなどし、自宅で9人を殺害したとされる。

厚労省は事件を受け民間団体と連携し、18年3月からSNSを活用した相談事業を始めた。寄せられた相談は19年度に約4万5千件あり、18年度(2万2千件)から倍増。相談者の約8割は20代以下で、SNSを通じた若者への支援は定着しつつあるようにみえる。

しかし19年の10~29歳の自殺者は2776人で、18年よりも25人増えた。全体でみると自殺者は減っているが、若年層の自殺率の高さが目立つ状況が続いている。

和光大の末木新准教授による11年の調査では、自殺に絡んでインターネットを利用をした人は自殺願望や抑うつ感が増すという結果が出た。一方、20代が自殺について思いを打ち明けて第三者からメッセージを受け取る状況に限ると、自殺願望が低減したという。

末木准教授は「相談者の追跡は難しく、相談事業の効果は捉えにくい。SNSやネットに投稿される自殺願望を適切な支援につなげていく取り組みを地道に続けるほかない」と話す。

SNS上で自殺を望む人の悩みにつけ込むような事件は続発しており、東京・池袋では19年9月、SNS上で自殺を望む人との接触を図っていた男に会った女性が殺害された。今年8月にも群馬県中之条町で、SNSで自殺志願者を募る投稿に応じた40代の女性が殺害される強盗殺人事件が起きた。

警察は座間市の事件以降、行方不明者の捜索を強化している。警視庁の担当者は「若者が行方不明になった場合は本人のSNSアカウントを探し、自殺願望の投稿や別の利用者との接点の確認を徹底している」と話した。

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