景気予測に頼らぬ売買ルール(窪田真之)
楽天証券経済研究所長兼チーフ・ストラテジスト

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株式投資
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2020/9/26 2:00
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私は、景気予測に依拠せず、長期的にいいタイミングで、株式を売ったり買ったりする方法をファンドマネージャー時代に学びました。その方法を私は「最強のローテーション投資法」と呼んでいます。

今回ご紹介するのは、私が運用を担当していたある公的年金ファンドで実際にやっていたアセットアロケーション(資産配分)のリバランス(変更)ルールです。このファンドでは、グラフの青矢印をつけたところ(2007年4~6月)、日経平均が1万8000円をつけた時、日本株を売り、国債を買いました。当時は世界的に景気が良く、私は、「日経平均はまだまだ上がりそうなのに、ルールだから仕方ない」と渋々、日本株を売ったのを覚えています。

赤矢印をつけたところ(08年10月)、日経平均が1万円から8000円割れまで下がった時は、複数回にわたり、国債を売却し、日本株を買い増ししました。この時、私は、「日本株は下がり過ぎ」と考えていましたので、株を買っていくことに違和感はありませんでした。ただし、ルールがなければ、あそこまで大胆に買い増しを続けることはできなかったと思います。

国内株と国内債券に投資するファンドで、投資比率は時価ベースで、国内株40%・国内債券60%と決められていました。「時価ベースで組入比率が、5%以上基準から離れた時、組み入れを基準の方向に戻す」というリバランスのルールが定められていました。

具体的に説明しましょう。仮に100億円のファンドの運用を、国内株式40億円・国内債券60億円でスタートしたとします。スタート時点で、株の組み入れ比率は40%、債券の組み入れ比率は60%です。

その後、国内株式で+25%、国内債券で+1%のリターンが得られたとします。すると国内株式は50億円、国内債券は60.6億円に時価が増加します。ファンドの時価総額は合計110.6億円に増えています。ここで、時価ベースで組入比率をはかり直すと、国内株式は45%に上昇、国内債券は55%に下がっています。基準となる組入比率(株40%・債券60%)より5%かい離したことになります。

ここで、リバランス・ルールが発動されます。ファンドマネージャーは株を売り、債券を買わなければなりません。実際、2007年4~6月に、このルールが発動され、私は日本株を売り、国債を買いました。当時、日本株に強気だった私が売ることができたのは、リスク管理のためのルールに従ったからです。

逆に、日本株が大きく下落し、日本株の組入比率が35%以下になると、ルールによって日本株を買い増ししなければなりません。2008年10月、リーマンショック後に日経平均が急落する局面で、このルールは複数回にわたって発動されました。

個人投資家でも真似できます。簡単に、運用対象とするリスク資産は日経平均インデックス型ファンドだけとします。

(1)投資金額を決める

まず日経平均型ファンドを長期的にいくら持つか、基準となる投資額を決めてください。仮に100万円とすると、次に日経平均型ファンドの時価ベースの保有額の下限と上限を決めます。基準となる投資額のプラスマイナス20%くらいがいいと思いますので、下限を80万円、上限を120万円とします。

(2)投資を開始

日経平均型ファンドを100万円買います。

(3)大きく下がった時のリバランス

日経平均が20%下がると、投資金額は時価ベースで80万円となります。さらに下がると、時価評価額が80万円を下回ります。保有額の下限は80万円と決めていますので、ここでルールが発動されます。日経平均型ファンドを20万円買い増し、保有額を100万円に戻します。

(4)大きく上がった時のリバランス

逆に日経平均が20%以上、上昇して時価で120万円を超えると売る必要があります。日経平均型ファンドを20万円売り、保有額を100万円に戻します。

一気に20万円売らずに、まず10万円だけでも構いません。やりやすいルールを決めていただければ良いと思います。今まで、このような考えがなかった人は、今日から決めてやってみたらいかがでしょうか。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。

窪田真之(くぼた・まさゆき)
1961年生まれ。84年慶大経卒、住友銀行入行。87年より大和住銀投信投資顧問などで日本株ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年所長。

[日経ヴェリタス2020年9月27日付]

日経ヴェリタス

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