SDGs達成は2092年? NPO警告 国債評価に影響も
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2020/9/25 11:00
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国連がSDGs(持続可能な開発目標)を策定して丸5年。2030年までに解決すべき17の目標に対する、世界の取り組みには遅れが目立つ。米非営利団体(NPO)によると、今のままだとSDGs達成は30年どころか92年になる見通しだ。投資家の間では、SDGsに対する国家の取り組みを国債投資に反映させる動きも出てきた。SDGsの概念は広く浸透し、30年までの10年は「行動の10年」と言われる。国家として真剣に取り組めるかが問われる。

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■「予定より62年遅れている」

「SDGsの達成は予定より62年遅れている」。9月10日、米NPOのソーシャル・プログレス・インペラティブの発表に注目が集まった。同NPOは、国内総生産(GDP)ではとらえられない各国の社会・環境への取り組みを評価した指数を2014年から算出し、国債に投資する投資家が取り入れている。市場の関心が高い。

同NPOの計算では、すべての国がSDGsを達成した場合を100とすると、20年は72.57。15年からの改善度はわずか1ポイントにとどまる。改善ペースが今のままであれば17ゴールの達成は期限の30年どころか、82年になる。さらに新型コロナによる悪影響で10年遅れ、92年まで伸びる可能性があるとした。

SDGsの達成度は以下のように計測している。SDGsのターゲットで定められた具体的な数値目標を満たした状態を100とする。たとえば、ターゲット3.1「30年までに、世界の妊産婦の死亡率を10万人当たり70人未満に削減する」では、10万人あたり70人を100とし、現時点での達成度を0~100で示す。

特に取り組みが遅れている分野はどこか。同NPOに聞いたところ、SDGsの16番目の目標「平和と公正をすべての人に」の遅れを危惧する。13番目「気候変動に具体的な対策を」や5番「ジェンダー平等を実現しよう」、10番「人や国の不平等をなくそう」にも懸念が強い。SDGsの達成には、環境問題や多様性への取り組みの加速が欠かせないことを示唆している。

■国ごとの達成度も類推可能

この試算には、同NPOが14年から毎年発表しているソーシャル・プログレス・インデックス(SPI)を活用した。SPIは世界各国の社会や環境といった経済以外の取り組み結果に着目したもの。栄養不足の比率、妊産婦死亡率、電気へのアクセス、60歳での平均余命、温暖化ガス排出量など「結果」を示す50の指標を用いて、国ごとの取り組みの進捗を0~100で表す。各国の点数を人口で加重平均したものが世界全体の点数になる。

社会・環境面への国家の取り組みを投資で考慮する動きも広がっている(オスロのノルウェー中央銀行)=ロイター

社会・環境面への国家の取り組みを投資で考慮する動きも広がっている(オスロのノルウェー中央銀行)=ロイター

今回のSDGsの計算では国ごとの達成度は算出していないが、SPIの対象領域と、SDGsの目標とは重なる部分が多く、類推できる。

■トップはノルウェー、日本は?

SPIのランキングでは、先進国ほど上位だ。トップがノルウェーで、デンマーク、フィンランドと北欧諸国が並ぶ。一方、下位は南スーダンやチャドなどアフリカ諸国だ。日本は個人の安全と健康の評価は高いが、温暖化ガス排出量や政治の男女平等などが課題で13位だった。

こうした社会・環境面への国家の取り組みを、国債投資で考慮する動きも広がる。米運用大手フランクリン・テンプルトンは、19年10月に世界の国債のESG(環境・社会・企業統治)評価にSPIを加えた。英モンドリアン・インベストメント・パートナーズも国債投資で各国のSPIを評価項目にしている。

■国際投資のSDGs、関連強まる

ソーシャル・プログレス・インペラティブのマイケル・グリーン最高経営責任者(CEO)は「国債や海外直接投資を手掛ける投資家からの関心が高い」と話す。SPIの高い国は新型コロナからの回復力もあった点に触れ、「SPIの高さは政治的なリスクの低減だけでなく、長期的な経済成長の基盤にもなる」という。

国債投資とSDGsは関連を強めており、環境への取り組みを反映した世界国債の指数もある。英FTSEラッセルの「気候変動リスク調整世界国債指数」は、日本や米国など世界22カ国を対象に、自然災害の影響や温暖化ガス排出削減への取り組みなどを考慮した。同指数に連動する投資も始まっているもようだ。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も保有する世界国債の気候変動リスクの分析に着手した。

■投資引き下げのリスクも

社会・環境に国家が真剣に取り組んでいるか。SDGsの達成が危ぶまれるからこそ、投資家の目も厳しさを増す。SDGs達成に向けた進捗の見えない国の国債は投資比率が引き下げられるリスクをはらむ。SDGs達成に向けた国家戦略を持ち、着実に行動することがより一層重要になってきた。

(ESGエディター 松本裕子)

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