コロナ禍のフィールドワーク 新しい調査方法模索

風紋
コラム(社会・くらし)
2020/9/27 2:00
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フィールドワークは文化人類学、民俗学などで使われる基本的な調査手法だ。調査対象となる地域に出向いて人と会い、話を聞き、一緒に生活したり、行事に参加したりして行動の意味などを細かに記録する。今まで当たり前にできていたこの調査がコロナ禍でしにくくなり、フィールドワークを前提にした研究や教育が困難に直面している。

移動が制限され、調査地に行けなくなっただけではない。長期間滞在して生活を共にする参与観察と呼ばれる調査は3密になりやすく、従来のやり方を続けるのは難しい。この事態にどう対応し、今後どうしていくべきか。フィールドワークによる教育や研究に携わる大学の教員らが現状報告や意見交換をする日本学術会議のオンラインシンポジウムが19日に開かれた。

海外の調査は渡航自体ができなくなり中断。国内の調査も高齢地域への訪問を自粛し、代替の方法を模索しているケースが多い。過去の調査で信頼関係が築けていれば、SNS(交流サイト)で話を聞くことはできる。現地に行くことが大前提のフィールドワークの概念を拡張すべきだという意見もあった。

国立民族学博物館の野林厚志教授は世界に数多く構築されている民族誌のデータベースなどを活用したオンラインフィールドワークの可能性を指摘した。現地に行く意義は、座学で得た知識や自分の常識が、実際に行って体験することで揺さぶられたり、覆されたりすることとされてきた。

現実の体験で疑問が生じ、「問い」を発見することは研究の出発点にもなる。野林さんは「データを調べ、比較することなどによって、新たな問いを見つけたり仮説を立てたりできるのではないか」と話した。

京都大アジア・アフリカ地域研究研究科の飯田玲子特定助教は、4月からコロナ禍の生活や意識の変化を大学院生と調べている。自分も院生も研究対象地はすべて海外。「行けないのなら、この状況をフィールドワークしてしまおうと考えた。様々な出来事のプロセスを追跡するのが私たちの強みなので、観察したものや自分の行動を徹底的に記録している」と言う。

自宅近くでは、飲食店の営業自粛でカラスが一般家庭のゴミを狙うようになった。コロナ禍が収束してしまえば忘れられ、失われてしまう変化の過程を記録することが何かの発見につながるかもしれない。

日本文化人類学会会長の窪田幸子神戸大教授は「今は立ち止まって考える貴重な機会と思っている。現地に行かずにできることが多くあることが分かった。一方、それでは足りないこと、失ってはいけないことも見えてきた」と話す。「世界が悩み、考え、そして道を見つけようとしている」と野林さん。これらの言葉は、あらゆる分野に共通する今の状況を表している。

(堀田昇吾)

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