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日本どうなる? オリンピアン2人に感じた希望
ドーム社長 安田秀一

Tokyoオリパラ
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2020/9/29 5:30
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オリンピアンの皆川賢太郎さん(左)と松田丈志さん

オリンピアンの皆川賢太郎さん(左)と松田丈志さん

新型コロナウイルスの感染拡大で日本経済が打撃を受けています。人口減少が進む地方では特に深刻なようです。米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店、ドームで社長を務める安田秀一氏は久しぶりに地方を訪れ、その魅力と窮状を目の当たりにしました。「このままでいいのか」と考え込んだ同氏ですが、2人のオリンピアンと話すことで、未来への可能性を感じたそうです。

◇   ◇   ◇

コロナ禍の中で、日本の首相が交代しました。安倍晋三前首相の政策を引き継ぐという菅義偉首相への国民の支持率はとても高いようです。ただ、僕はとても複雑な気持ちです。日本人はこんな状況になっても変化を望まないのか、と感じてしまうからです。

9月上旬、僕は遅い夏休みとして、修験道の場として知られる奈良県の大峰山と新潟県の苗場を訪れました。国内の田舎を経験したのは久しぶりでしたが、図らずも「地方の魅力とその窮状」という対極的な2つの要素を知るいい機会になりました。苗場ではアルペンスキーで五輪4大会に出場した皆川賢太郎さん(43)の実家であるペンションに、競泳で4つの五輪メダルを獲得している松田丈志さん(36)の家族とともに伺いました。日本が誇る2人のアスリートとじっくり話をして、大変大きな刺激をもらいました。

大峰山も苗場も素晴らしいところで、東京育ちの僕は心底驚かされました。苗場には巨大で深い緑に覆われた山があって、驚くほどきれいな川が流れていて……皆川さんが子供の頃から泳いでいたという川のほとりはまるで映画のセットのようでした。その一方で、人がいなくてどんどん寂れていく地方の現実がありました。大峰山ではかつて約400軒あった温泉宿が約250軒に減ったと聞きました。夏の苗場や湯沢の街ではそもそも人を見かけず、まるでゴーストタウンのようです。地方の素晴らしさと疲弊ぶりのコントラストがすさまじくて、あらためて「日本はこのままでいいのか」、と強烈な憂いが胸を突き刺してきました。

苗場にある皆川賢太郎さんの実家のペンションを訪れた(2006年2月、トリノ五輪での皆川さん)

苗場にある皆川賢太郎さんの実家のペンションを訪れた(2006年2月、トリノ五輪での皆川さん)

なぜこんなことになるのでしょう。

■どこの地方も同じような「ハコモノ」

東京育ちの僕が目を丸くしてしまうほどの素晴らしい環境が、地域ごとにゴロゴロ転がっているにもかかわらず、日本の地方行政はどこも補助金をもらっての「ハコモノ作り」、道路や施設を整備することが中心です。県庁や市役所などは場違いなほど立派な建物ばかりですし、国体後の総合運動公園も「なぜこんな場所にこんなにも巨大なモノが……」と思えるような過剰な施設ばかりです。道の駅も高速のサービスエリアもどこも同じようなフォーマット、そして、そんな光景は全国津々浦々まったく同じで、中央が打ち出す画一的な振興策しか取れてないのは一目瞭然です。美しく誇るべき自分の郷土から、背広に着替えて酷暑で雑踏の東京に陳情にあがる姿は、まるで参勤交代を彷彿(ほうふつ)とさせます。こんなにも支配的な中央集権のままで本当にいいのでしょうか。

それが故に、地域の人々が自分たちの持つ独自の魅力に気づけず、適切な開発やマーケティングができないのではないでしょうか。

苗場へは東京から車で3時間とアクセスは最高です。スキー旅館など夏には都心の企業にまるごと貸し出して、夏季限定のサテライトオフィスにすることだってできそうです。児童や学生には山や川で学ぶサマースクールを開催したり、もっと長期間で安全に行えるスポーツの合宿を企画して招致したりするなど、いくらでも活用方法はありそうです。当日の東京の最高気温は35度、苗場は26度と9度も差がありました。昨今の東京の暑さは正直「生命の危険」を感じるレベルです。コロナ禍をテレワークの定着化と地方創生を実現できる「変化の機会」に活用すべきと感じました。

そんな地方の疲弊ぶりに驚いてちょっと調べてみたのですが、日本の一世帯あたりの平均収入は1994年の約664万円をピークに、2018年は約550万円まで下がっています。消費税は3パーセントから10パーセントに増税されています。全体の可処分所得が減り、大阪や名古屋も元気がなく、人も富も東京に集中、今の日本は「東京一本足打法」状態です。地方は東京ばかりを見て東京に詣でるわけですから、地方が衰退していくのは当然の流れです。

もとより、少子高齢化により日本財政が年々厳しさを増し、恒常的に赤字国債を発行、マイナス金利で異次元の金融緩和を続けるという、財政的にはもはや打つ手はない状態です。その上、我々国民は先の震災の復興税も37年まで払い続けている中、今回のコロナ禍に対する巨額の財政出動です。いったいどんな未来が待っているのか。一人の経営者として、寒気すら覚えるほどの将来負担だと感じてしまいます。

やるべきことは行政の抜本的なダウンサイジングしかないと思えるのですが、道州制などの抜本的な議論は立ち消え、その間にも国務大臣のポストは増え、国会議員の給料も増えています。

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