被告側自ら「逆転有罪を」 異例主張、家族の意向

社会・くらし
2020/9/23 23:06
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高校生2人が死傷した交通事故で無罪判決を受けたのに、二審で自ら有罪を望む――。自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた80代被告の弁護側が、10月から東京高裁で始まる控訴審で、異例の主張をする方針だ。被告家族の意向などが理由だが、専門家からは冷静な対応を求める声も上がる。

事故は2018年1月9日朝、前橋市の県道で起きた。被告の運転する乗用車が暴走し、自転車で通学途中の高校生2人に衝突。1人が死亡、別の1人も重傷を負った。

事故を起こしたのは川端清勝被告(87)。当時85歳で低血圧などの症状で通院し、物損事故を繰り返していた。家族が心配し、被告に運転をさせない方法を話し合っていた直後、事故は起きた。

一審・前橋地裁で弁護側は無罪を主張したが、出廷した被告の長男が「無罪は望んでいない」と話すなど、家族側は被告が有罪となり、罪を償うべきだと考えていた。

今年3月の一審判決は、服用していた薬の副作用で意識障害に陥ったとする一方、医師から副作用の説明を受けておらず、死傷事故を起こす危険は予見できなかったと判断。禁錮4年6月の求刑に対し無罪を言い渡した。判決を不服として検察側が控訴した。

被告の家族側は、控訴審で一審とは別の弁護士に依頼。選任された弁護人は裁判記録や家族の意向を踏まえ「被告には事故を起こす予見可能性があり、運転を回避すべき義務があった」と、有罪を求める方針を決めた。

「高齢ドライバーが事故を起こすと、被害者や世間の怒りは本人だけでなく、家族にも向きがちだ。責任を感じ、苦悩する家族は非常に多い」。犯罪加害者家族の支援に取り組むNPO法人「ワールドオープンハート」(仙台市)の阿部恭子理事長はこう打ち明ける。

身内の意向は、刑事裁判にどう影響するのか。甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は、「刑罰は復讐(ふくしゅう)のための罰ではない。無罪とすべきケースは無罪とすべきで、過失があったかどうかを理論的に判断することが何より重要だ」と話した。〔共同〕

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