EV競争、電池が主役 テスラは3年後に260万円新型車

2020/9/24 2:00 (2020/9/24 4:28更新)
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電池の内製化について発表するテスラのマスクCEO(22日、同社の中継映像から)

電池の内製化について発表するテスラのマスクCEO(22日、同社の中継映像から)

【シリコンバレー=白石武志】電気自動車(EV)用電池で競争が熱を帯びている。EV世界最大手の米テスラは22日、電池の基幹部分である「セル」を自社生産すると発表した。同社を追いかける欧米の自動車大手も急ピッチで大型電池工場の建設に動いている。EVの性能とコストを左右する電池の競争激化が、車体価格の低下につながりEV普及に弾みがつく可能性がある。

「値ごろなEVを発売することは、会社設立以来の我々の夢だった」。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は22日、株主総会にあわせて米カリフォルニア州の工場で開いた事業説明会で、3年後をメドに2万5000ドル(約260万円)の新型車を発売すると明らかにした。

現行のテスラ車で最も安い3万5000ドルからの小型車「モデル3」を1万ドル下回る。アーサー・ディ・リトル・ジャパンの鈴木裕人パートナーは「1台約260万円というのは補助金がなくても競争優位を保てる価格水準だ」と指摘する。

大幅な価格低下を可能にするのが、EVコストの約3割を占めるとされるリチウムイオン電池の内製化だ。テスラは22日、パナソニックなど外部から供給を受けてきた中核部品の円筒形セルについて、2022年にEV140万台分に相当する年間100ギガ(ギガは10億)ワット時を自社生産する計画を示した。現在のパナソニックからの購入量の約3倍の規模だ。

テスラは19年に独自の電極技術を持つ米マクスウェル・テクノロジーズを買収するなど、電池の中核技術のノウハウを蓄積。セルの自社生産にあたっては電極素材や製造工程を抜本的に見直し、容量当たりの生産コストを現在に比べ56%引き下げる計画だ。

電池生産でパートナーのパナソニックはかねて「テスラのすべての需要を1社だけでまかなうつもりはない」(パナソニック幹部)としており、テスラが中国でLG化学などから電池を調達することも静観してきた。

赤字続きだったテスラ向け電池事業の黒字化メドがつきつつあるなか、自社生産に踏み出したことで「今後、(パナソニックから)テスラの新型車への供給が減る可能性がある」(みずほ銀行の湯進主任研究員)。23日株式市場ではテスラ向けビジネスの成長期待が後退しパナソニック株は前週末比4%下落した。

今後も、テスラはパナソニックや中国の寧徳時代新能源科技(CATL)などとの提携を維持する。電池セル調達で複数の選択肢を持ち続ける構えだ。

EV市場でテスラを追う他のメーカーも電池コスト引き下げを急ぐ。

米ゼネラル・モーターズ(GM)は韓国のLG化学と折半出資する合弁会社を通じて23億ドルを投資し、米オハイオ州で年産30ギガワット時の電池工場の建設を進める。

独フォルクスワーゲン(VW)は、スウェーデンの新興電池メーカーであるノースボルトと折半出資で年産16ギガワット時の自前の電池工場を建設する。VWはLG化学や中国のCATLなど電池メーカーと幅広く提携し、29年までに約75車種のEVを投入する方針だ。

EV電池の競争は素材調達にも及ぶ。電池に欠かせないコバルト需給が逼迫するとの見方から、需要家である自動車メーカーや米アップルなどがこぞって長期・安定購入に向けて採掘会社との直接交渉に乗り出していると報じられている。

テスラは22日の事業説明会で、コバルトを使わない正極材の開発に取り組んでいることも明らかにした。テスラは技術革新によって原材料の供給リスクを解消する目算だが、高度な化学技術が問われるだけに計画通りいくかは不透明だ。

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