フィンテック企業、ギグワーカーの資金需要に応える

CBインサイツ
スタートアップGlobe
コラム(テクノロジー)
2020/9/25 2:00
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 企業や個人から単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」が増えている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気の悪化で失業した人たちが参入していることが一因とされる。ギグワーカーは安定した収入がない場合も多く、従来の一般的なローンや金融サービスを利用できないことが少なくない。欧米を中心としたフィンテック系のスタートアップ各社はギグワーカーの需要に注目し、特化したサービスで競っている。CBインサイツが分析した。

柔軟な請負労働によって成り立つ労働市場「ギグエコノミー」は、もはやニッチ市場ではない。インターネットを通じて単発や短期の仕事を請け負う「ギグワーカー」は米国だけで推定5700万人、世界の取引額は年間2000億ドル以上に上り、ギグエコノミーは世界経済の重要な分野になっている。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

一方で、従来の金融商品はこうした労働者や企業に特有のニーズを念頭に置いて開発されてはいない。安定した収入源を持たないギグワーカーは従来のローンや金融サービスの審査にはなかなか通りにくい。このため個別の金融商品やサービスで、市場のギャップに対応するフィンテックスタートアップが増えている。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出制限令を受け、多くのギグワーカーの収入は減っている。反対に生鮮食品の配達など、需要が増えているサービスもある。ギグワーカーの権利を守る米カリフォルニア州の州法「AB5」など規制の圧力もギグエコノミーの力学を変えるだろう。規制強化でギグワーカーの福利厚生は拡充されるかもしれないが、こうした労働者に頼る企業の多くは収益モデルを脅かされる可能性がある。

CBインサイツのデータに基づき、ギグエコノミー向けにより良い金融サービスを提供しようとしている未上場の約70社を抜き出した。

この市場マップにはギグワーカーに特化した商品を開発しているか、ギグエコノミー企業と提携している未上場の存続企業を記載した。主な活用事例に応じて各社を配置した。

ギグエコノミーに対応したフィンテック企業約70社

ギグエコノミーに対応したフィンテック企業約70社

■カテゴリーの内訳

デジタルバンキング:ギグワーカー特有のニーズに対応したデジタルバンキングサービスを提供する企業。米オキシジェン(Oxygen)、米デーブ(Dave)、米リリ(Lili)などのチャレンジャーバンク(新興のデジタル銀行)はギグワーカーに特化した商品を手掛けており、迅速な口座振込、納税、予算管理ツールなどを提供している。

融資&前払い:ギグワーカー向けに融資サービスを拡充している企業。ギグワーカーは収入が不規則なため、従来の手段では個人ローンの審査に通りにくいことが背景にある。米アーニン(Earnin)は相互出資で「自分が選んだ額(の手数料)を支払う」仕組みをとっており、利用者は最大100ドルを借りられる。返済は次回の報酬が振り込まれた際にアーニンから引き落とされる。このため、利用者は口座の残高がマイナスになって手数料が発生することなく、短期の支出を賄える。ドイツのフィニャータ(Finiata)のように、融資限度額を高くしてフリーランス労働者が業務に必要な物品を購入できるようにする企業もある。

インフラ:ギグエコノミー企業に技術インフラを提供し、各社がギグワーカーに自社ブランドの金融サービスを提供できるようにするスタートアップ。料理宅配の米ドアダッシュや宅配代行の米インスタカートは米マーケタ(Marqeta)が提供するオープンAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース=外部のアプリと連携できる機能)の支払いカード発行プラットフォームを活用し、配達員にデビットカードで即時に報酬を支払っている。

保険&福利厚生:ギグワーカーに損害保険、生命保険、健康保険を提供しているスタートアップ。ギグワーカーは従来型の労働者とは保険のニーズが異なることが多いが、企業の保険は使えない。米バックル(Buckle)はライドシェア運転手の公私両方における車の運転を補償する一時払い保険を提供している。このほか最適な健康保険をお薦めする検索エンジン、米ストライドヘルス(Stride Health)はギグワーカーの健康保険加入を支援する。

請求&決済:個人事業主や業者向けに、迅速で安い高頻度の決済システムを提供する企業。米ストライプ(Stripe)の決済サービス「コネクト」のAPIにはカスタマイズ機能があるため、法人や個人の出店者はオンラインマーケットプレイスでの売上代金をより簡単に受け取ることができる。同社の「コネクト・ペイアウト」を活用することで、企業もギグワーカーに即日報酬を支払える。

人事&タレントマネジメント(人材管理システム):ギグエコノミー企業による個人事業主の採用や身辺調査を支援するスタートアップ。例えば、米チェッカー(Checkr)は候補者の身辺調査に特化しており、米ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズや同リフト、インスタカートなどと提携している。

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