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ローソン、洗剤を量り売り お試し需要とらえた実験店

NIKKEI STYLE

日経クロストレンド

ローソンがプラスチック削減の新たな取り組みとして、ナチュラルローソン2店舗で実験的に実施している洗剤のセルフ量り売りが好評だ。SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けたプラスチックやゴミ削減の観点から、少量買いが難しい洗剤カテゴリーを選んだ。ユーザー層との親和性が共感を生んだ。

タッチパネルで完結

洗剤のセルフ量り売りを実施するのはナチュラルローソンの直営2店舗。立地による影響を検証するためオフィス街の芝浦海岸通店と、住宅地の神宮外苑西店を選んだ。これまでもナチュラルローソンで販売していたニュージーランドの自然派ブランド「ecostore(エコストア)」の食器用洗剤、洗濯用洗剤、デリケート用洗剤、柔軟剤の4種を取り扱う。価格は種類によって異なり、100グラム当たり70~110円(税別)となっている。

セルフ量り売りの手順は、次の通り。

(1)好きな容器の重量を専用のはかりで計測する
(2)商品タンクから必要量を充てんする
(3)充てん完了後に再びはかりで重量を計測する
(4)表示された価格を確認して専用シールを発行する
(5)容器にシールを貼ってレジで代金を清算する

充てん時は1プッシュで約30ミリリットルが出る。店頭にはナチュラルローソンオリジナルの透明ボトル(120ミリリットル)、既存の詰め替えボトル(500ミリリットル)が用意され、いずれも無料。マイボトルを持参しても構わない。神宮外苑西店では、マイボトルを持参する人が多く、芝浦海岸通店では従来のユーザー層ではなかった男性のビジネスパーソンが120ミリリットルに詰めることが多いという。

専用のはかりは、量り売りが浸透している海外へ製品を卸している寺岡精工(東京・大田)に依頼した。はかりの操作はすべてタッチパネルで行う。ナチュラルローソンのユーザー層であるアクティブシニアでも直観的に操作できるよう文字情報は極力減らし、マークや色で判断できるようにソフトをカスタマイズした。ローソン商品本部ナチュラルローソン部の鷲頭裕子部長は、「完全セルフ方式に対するネガティブな反応を懸念した」と打ち明けるが、これまでのところSNSを含め否定的な意見は一切ないという。

ユーザー層と親和性の高い製品で勝算

今回、洗剤のセルフ量り売りに着手したのはなぜか。鷲頭氏はこれまで通常のローソン店舗でマチカフェのカップをプラスチックから紙に変更するなど、SDGsの取り組みを進めてきた。2019年9月、ナチュラルローソンの担当に着任した際、東京・神奈川・埼玉・千葉で約150店舗を展開するナチュラルローソンでできることを検討した。第1弾は、弁当容器をプラスチックから紙に置き換えた。一度共感すればリピーター化する傾向があるナチュラルローソンの顧客からの反応もよく、「賛同するお客様がいることを確信できた」(鷲頭氏)。

第2弾では、SDGsの達成をさらに進めるためにはプラ削減だけでなく、「そもそもゴミを出さないことが一番いい」と考えた。鷲頭氏の念頭にあったのは、プラスチック容器がなければ成立しない日用品だ。例えば洗剤はビッグボトルはよくあるが、少量で試せる商品があまりない。もし合わなかった場合、破棄するしかなくなる。「洗剤は機能性だけでなく、香りなどで選ぶことも多いある種のし好品。少量から試したいニーズはある」と見て、量り売りのトライアルを始めることにした。

そこで既に量り売りを実践していたエコストアの知見を生かすことにした。「エコストアで量り売りをする層と、ナチュラルローソンのユーザー層との親和性が高い」と感じたことも、トライアルを後押しした。どちらも若い女性だけでなく、アクティブシニア層の利用が多いという。

実際に量り売りを開始したところ、「愛用していたエコストアの量り売りが近くにできてよかった」とわざわざ来店する客が増えたという。「コンビニにとって一番の利点は近いこととされる。目的買い商品をいかにつくるかが課題であるだけに、強い柱になり得る。想定以上の反応に驚いた」と鷲頭氏は量り売りの潜在力の高さを確信する。

洗剤の量り売りに関してはボトルの液ダレが課題で、10月には新しいボトルを導入予定だという。また9月中旬には病院内のローソン店舗にも導入し、反応を見て全国の病院内店舗への拡大を検討する。

ナチュラルローソンにおける今後の展開については、洗剤という枠にとらわれず、量り売りのポテンシャルについてさらに深掘りしていきたいという。「様々なノウハウを異なるものに置き換えて提案することで、別の可能性が見えてくる」と鷲頭氏。ローソンのレギュラー店舗への展開については、施策に共感してくれる顧客層が多くなければ「風景」と化してしまうと考え、慎重に判断するという。

(ライター 北川聖恵)

[日経クロストレンド 2020年9月17日の記事を再構成]

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