三島賞の宇佐見、山本賞の早見「書きたかったテーマ」

文化往来
2020/9/27 2:00
保存
共有
印刷
その他

「温かみを感じてもらえるような作品を書いていきたい」と語った宇佐見りん

「温かみを感じてもらえるような作品を書いていきたい」と語った宇佐見りん

「かか」(河出書房新社)で第33回三島由紀夫賞に決まった宇佐見りん(21)はデビュー作での最年少受賞となった。一方、「ザ・ロイヤルファミリー」(新潮社)で山本周五郎賞に選ばれた早見和真(43)は、既に「イノセント・デイズ」などのヒット作を持つ実力派だ。作家としての実績は異なるが、2人とも自分が書きたいテーマに挑んだ作品で受賞した点は共通している。

「かか」は夫に裏切られ、心を病んだ母親との関係を、浪人生である19歳の娘の視点から描いた。方言にも似た幼さを感じさせる語り口が、愛憎半ばする感情を際立たせる。「女性の一人語りは珍しくないが、そこに文学的なたくらみを感じる。若くしてデビューし、天才と呼ばれた三島由紀夫の名を冠した賞にふさわしい」と選考委員の高橋源一郎は評価した。

「先輩に認めてもらえたのは感無量」と話した早見和真

「先輩に認めてもらえたのは感無量」と話した早見和真

「母と娘の関係は自分の中で人生のテーマ。最初は深掘りすることができなくて、ぐるぐる考えていたが、実際に家で使っている言葉を参考にしたこの語り口を使ってみたら、物語が動き出した」と宇佐見。「(読んだ人に)ほんの少しでも温かみを感じてもらえるような作品を書いていきたい」と抱負を述べた。

「ザ・ロイヤルファミリー」は馬主としてG1制覇を目指す会社社長とその息子の姿を、秘書役のレースマネジャーの視点からつづっている。選考委員の今野敏は「コロナ禍で選考会が延びたため、全ての候補作を再読したが、さらに感動が増したのが受賞作だった」と話す。

「編集者から好きなものを書いたらいいんじゃないですか、と言われ、思いついたのが学生時代から大ファンの競馬だった」と話していた早見。「(作家の)先輩たちに認められたことはあまりないので感無量。今後も気を引き締めて書いていく」と喜びを語った。

(中野稔)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]